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連載 被爆70年

[ヒロシマは問う 被爆70年] 抑止力 「刀」に例える 首相、安保法案に前のめり

 日米同盟を強化し、地球規模での自衛隊と米軍の連携を可能にする安全保障関連法案。国会での審議が本格的に始まった5月27日、安倍晋三首相はその意義を「刀」に例えた。

 「抑止力をしっかり守っていく必要がある。刀がいったん抜かれれば大変だと相手が認識すれば、刀をさやから抜くことはない」

 日米同盟における究極的な「刀」は、核兵器に他ならない。中国の海洋進出や北朝鮮の核・ミサイル実験をけん制するには、「核の傘」を差し出す米国との同盟強化は不可欠―との論法だ。

 安倍首相とともに審議に臨んだ岸田文雄外相。被爆地広島の選出を前面に非核外交を展開する一方、首相が目指す日米同盟の強化を形にしてきた。その一つの到達点が、同法案とも連動する日米防衛協力の指針(ガイドライン)の18年ぶりの再改定だった。

 国会審議の本格スタートの約1カ月前、安倍首相は訪米し、日本の首相として初めて米議会の上下両院合同会議で演説した。岸田外相も議場で見守る中、同法案の成立を「夏までに成し遂げる」と言い切った。その夏は、被爆70年の夏でもある。被爆国は大きな岐路を迎えている。(藤村潤平)

(2015年6月6日朝刊掲載)