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連載 被爆70年

[ヒロシマは問う 被爆70年] 海外で体験伝承少ない傾向 在外被爆者アンケート 

国内に比べ10ポイント以上低く

 海外に住む被爆者(在外被爆者)で被爆体験を誰かに伝えたことのある人の割合は、日本の被爆者に比べて少なく、伝えた相手も子や孫に限られる傾向のあることが、被爆70年に合わせて中国新聞社がしたアンケートで分かった。米国や韓国など、それぞれの国情を反映する回答も目立つ。

 アンケートは昨年10月からことし2月にかけ、韓国と北米、南米の計6カ国416人から回答を得た。韓国と北米(米国とカナダ)は現地の被爆者団体の協力を得て、それぞれ191人、181人分を主に郵送で集めた。南米はブラジル、アルゼンチン、パラグアイの3カ国から44人分。昨年10月に広島県が派遣した健診団に記者が同行し、調査票を配って回収した。

 「被爆体験を語ったり、何らかの形で伝えたりしたことがあるか」との問いに、「ある」と答えたのは全体で63・7%。中国新聞社が先に行った日本の被爆者アンケートの回答(74・4%)より10ポイント以上低かった。北米だけを見れば日本とほぼ同じ75・1%だが、韓国が52・4%と特に低かったことが影響した。

 伝えた相手は「子や孫」が、複数回答で76・6%と圧倒的に多く、日本の70・0%を上回った。他方、日本では平和集会などで証言した人が35・7%、学校などで子どもたちに語った人が30・8%いたが、在外被爆者はそれぞれ18・5%、11・7%にとどまった。子や孫には熱心に伝えながらも、公の場で語る機会は限られている実態が浮かぶ。

 体験を伝えてこなかった人に理由を尋ねると、「記憶をたどるのがつらい」が31・5%で最多(複数回答)。70年前の過酷な体験は、今なお、心身に重くのしかかっていることがうかがえる。「差別を招かないか心配」も19・6%と日本の12・4%より高く、特に韓国では26・1%に上った。(金崎由美)

在外被爆者
 広島や長崎で原爆に遭い、その後日本国外で暮らしている人。厚生労働省によると、国外で被爆者健康手帳を持つ人は2014年3月末時点で35カ国・地域に約4440人いる。韓国の3050人に続き、米国980人、ブラジル150人など。手帳を持たない被爆者も相当数いるとみられる。原水禁国民会議が入手した朝鮮被爆者協会の調査では、08年時点で北朝鮮にも382人いたという。

(2015年4月11日朝刊掲載)