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ジュニアライター発信

『ジュニアライター発』 フォトジャーナリスト安田さん講演会 痛みが分かるから優しく

 「シリア難民、東日本大震災の取材から」と題したフォトジャーナリスト安田菜津紀さん(29)=東京都=の講演会が、広島市中区でありました。

 大震災については、直後から、義理の両親が暮らしていた岩手県陸前高田市で取材を続けています。漁師の菅野修一さんは、津波被害の大きさにショックを受け海に出るのをやめようと決めました。しかし、「じいちゃんの白いお魚が食べたい」という孫の言葉から再び海へ戻ったそうです。地域の人も少しずつ漁に出始め、地域の祭りの復活にもつながりました。

 また、以前からよく訪れていたシリアは、大震災と同じころ内戦に突入。2千万人いた国民のうち国内外に避難した人が1千万を超えたそうです。隣国ヨルダンにある難民キャンプを中心に今も取材しています。

 家族で一緒に国境を越えられず、1人で病院で治療を受ける9歳の少女や、ヨルダンに行っても衛生環境が悪く、満足に食べ物がないなど苦悩の続く現状を紹介しました。写真の中には、陸前高田市の人がシリア難民に子供服を送る準備をしている様子や、シリアの人たちが過激派組織「イスラム国(IS)」に殺害されたとされる後藤健二さん、湯川遥菜さんを弔っている場面がありました。痛みが分かるからこそ人に優しくなれると思いました。

 「被災地など、そこで生きている人の生活を写真で発信していくことで興味を持ってもらうのがフォトジャーナリストの役割」と安田さんは話します。それぞれが自分にできる役割を果たして、みんなが協力していくことが、復興につながるのだと思いました。(高3中野萌、高2正出七瀬)

(2016年4月12日朝刊掲載)

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