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ジュニアライター発信

『ジュニアライター発』 戦場カメラマン 渡部陽一さん 罪なき子の涙 届けたい

 講演で広島を訪れた渡部(わたなべ)陽一さん(43)に、戦場カメラマンとしての思いを聞きました。

 渡部さんは20歳の時、戦場カメラマンになりました。先生から、アフリカには今でも狩猟(しゅりょう)生活をしている人々がいると聞き、実際に行ったのがきっかけ。当時アフリカのルワンダは内戦中で多くの子どもたちが戦火にさらされ泣いていました。自分に何ができるか考え、好きだったカメラで子どもたちの姿を世界に伝えることにしたのです。

 戦地で最も印象に残っているのは、病院が破壊(はかい)されたイラクで、耳が不自由な息子に手術を受けさせるため、海外に行こうとした若い父親です。彼は命を狙(ねら)われており、息子を海外に行かせる代わりに自分の命を兵士に差し出しました。

 少年兵に会ったこともあります。目が血走っていて表情から感情が読み取れない、ロボットのようだったそうです。しかし彼らも戦争の被害(ひがい)者なのです。

 「犠牲(ぎせい)になるのは、いつも何の罪もない子どもたち。自分は写真という手段で、子どもたちの声を戦争を知らない若者らに届けたい」。そんな思いで23年間、戦地に命がけで行き続けています。「泣いて助けを求める子どもたちがいる限り、続けていきたい」

 今後はエジプト、ヨルダン、シリアといったアラブの国を取材したいそうです。これらの国々はこれまでも取材しており、過激派組織「イスラム国」による事件が多発している中、引き続き定点観測をすることで、時間の流れの中で変化を見つけ出せるからです。

 私たち日本で暮らす若者も、日々の生活の中で世界とつながるきっかけがたくさんあるそうです。したいと思うことを実際にやってみる、疑問に思っていることに踏(ふ)み込(こ)んで調べてみる、といったことです。「世界を感じ取るための入り口になる」と教えてくれました。

 私たちも戦争の犠牲になっている子どもたちの現状に目を向けるとともに、いつか日本と世界をつなげる入り口になりたいです。(高2谷口信乃、山田杏佳、高1見崎麻梨菜)

(2015年12月7日朝刊掲載)

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