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ジュニアライター発信

『ジュニアライター発』 模擬核軍縮会議 各国の立場で議論深める

 「核兵器のない世界」への道筋を10代の若者が各国の代表になりきって考える模擬核軍縮会議が広島市中区の原爆資料館であった。核軍縮協議を通じて核兵器の現状や課題、交渉の難しさを知ってもらおうと広島県が企画。ジュニアライター8人を含む中高生48人が核兵器を持つ米国、中国、インドと、非保有国の日本、オーストリア、インドネシア、ブラジルの7カ国に分かれ、各国の意見を主張した。議場外での細かな修正協議も重ねて最終文書の採択にこぎ着けた。参加したジュニアライターの感想を紹介する。

■日本

高2林航平

 被爆国として核軍縮を進めたい。でも米国とロシアの軍縮の一方で他の国の脅威が高まる不安もある。米国の「核の傘」が小さくなる中、雨(危険)が強まるのは日本の安全にとってどうなのか―。これまでは、なぜ核兵器がすぐ廃絶できないかと考えていました。核軍縮の必要性を強く思う半面、国家の安全も考えないといけない難しさを今回知りました。でも、やはり核兵器はなくしたい。まず国同士の信頼関係を強めるのが大切だと思いました。

中2岡田日菜子

 私が担当した国は日本で、初めは自分の住む国なので簡単だと思っていました。でも日本は、核兵器を保有していない国として人道的には核軍縮を進めていきたいけれど、安全保障のために、現実的な進め方をしなければいけない、とも考えています。会議ではそのような自国の立場や他国の事情も考えながら交渉をしていくのがとても難しく、お互いの国にとって納得できる形でまとめるのは大変でした。今回、この会議に参加したことで核軍縮の知識などが増え、同時にいろんな国の立場や考え方を確かめることができました。

■米国

高2上原あゆみ

 核兵器を保有している米国はまず、ロシアや中国とのパワーバランスを考えます。初めの文書案には「核兵器の先行不使用」など、どうしても妥協できない文言もあり、まとまる気がしませんでした。

 でも、国際社会の核軍縮の機運を意識し、互いにある程度の譲歩も必要と考え、表現を薄めるなどの修正で合意に達しました。核軍縮の流れを止めないためにも、少しずつでも話し合いを続けることが重要だと感じました。

■​中国​

​高1坪木茉里佳

​ ​今回の私の担当は中国でした。冒頭演説で中国は、核廃絶を強く求めてきたといっているけれど、実際には年間10発程度のペースで核弾頭数を増やしているなど矛盾が見えました。自分の担当した国の意見を相手を納得させられるように伝えるのがすごく大変で、相手に言いくるめられかけました。

■インドネシア

高2谷口信乃

 僕は非同盟諸国(NAM)グループの代表、インドネシアとして会議に参加しました。NAMは人道的な視点を最重要視し、先進国に対しても強気な姿勢で自分たちの意思を示していると感じました。一見受け入れられないと思えるような意見でも、言わなければ何も始まりません。強気の交渉がうまくいった点もありました。国際社会に出て平和に向けて働き掛けるときには、まずは自らの意見をはっきりと示すことが必要だと感じました​。​

高1溝上希

 非同盟諸国グループの代表国として交渉に当たりました。核軍縮の時間軸設定や、核兵器禁止条約の交渉開始を求めるなど、核保有国側を厳しく批判する立場でした。全体の議論を破綻させることなく、どこまで自分の意見を貫き通せばいいのか、どこが落としどころなのか―ぎりぎりの駆け引きは難しく、スリリングでした。

 「相手の立場で考えてみる」姿勢が、議論の基本になるんだ。今回身をもって体験しました。

​■​ブラジル​

高2岡田春海

​ 新アジェンダ連合(NAC)の代表国ブラジルを担当しました。最終文書が、核軍縮へ向けた具体的な時期を提示し「非人道性」を盛り込む内容になるよう交渉を行いました。一番大変だったのは、個人ではなく国の意見を通さないといけないというプレッシャーです。他の国も同じように譲れない点を主張してきました。全ての国がそれぞれの意向を声高に主張する中で、折り合いを見いだして交渉をまとめていく難しさを感じました。

中2プリマス杏奈

​ ​中学生のジュニアライターとして、高校生に囲まれる中での活動は貴重な経験でした。私たちは、核兵器を非人道的なものだと強く主張し、核兵器の法的禁止を求めている新アジェンダ連合(NAC)の代表、ブラジルを担当しました。模擬核軍縮会議では参加している国々によって意見は大きく異なりました。それぞれの意見がとても勉強になりました。国際交流と核兵器のあるべき姿についてさらに関心を持ちました​。​

(2016年2月29日朝刊掲載)

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