×

ジュニアライター発信

ジュニアライター留学体験報告 

 平和をテーマに取材・活動している中国新聞ジュニアライター2人が2014年1、2月から約1年間、財団法人AFS日本協会(東京)による交換留学でマレーシアとコスタリカにそれぞれ滞在した。ホームステイして現地の高校に通いながら学び感じたことを報告する。

マレーシア

多民族共生 手本に

 マレーシアには、たくさんの民族が共存しています。6~7割を占めるイスラム教を信仰するマレー系のほか、中国系やインド系、10を超す少数民族。以前はマレー系が優遇されていましたが、2009年に就任したナジブ首相が掲げるスローガン「ワン・マレーシア(一つのマレーシア)」で、民族に関係なく多様性を認める政策が展開されています。

 僕にとっては宗教や民族の違いによる学校生活は驚きの連続でした。

 通っていた国立の中等学校(5年制)は成績順のクラスで、民族に関係なく机を並べていました。授業は、数学と理科、英語は英語で、社会やマレー語はマレー語で受けました。加えて週2回、「文化」としてのイスラム教、中国語、タミール語、自習の中から選択する授業がありました。僕は中国語を取りました。

 国教がイスラム教と定められているマレーシアだからこその違いもありました。週2、3回の道徳の授業は、マレー系民族を対象にイスラム教に基づいて学ぶクラスと、それ以外の人向けのクラスに分かれていました。毎週金曜はイスラム教の礼拝に合わせて、授業は午後1時前後には終わっていました。

 8月中旬にあったイスラム教の断食明けのお祝いでは、民族に関係なく全員が校長にあいさつに行きます。そこでは「お年玉」として約100円もらいます。ただ、学校によって、貧しい生徒を対象にしたり、マレー系のみを対象にしたり、と違いがありました。僕はマレー系でないためもらえませんでした。少しイラッとしてしまいました。

 「ワン・マレーシア」といっても、まだまだ社会の中枢はマレー系の人たちが占めるなど、優遇の風潮は残っていると感じました。しかし、学校では民族に関係なく、みんなが仲良くしています。こういった状況が当たり前になると多文化共生が実現し、世界の手本になるのではないでしょうか。(高2井口雄司)

コスタリカ

真の「豊かさ」実感

 「世界で一番幸せ」(イギリスの民間シンクタンク調べ)と言われている国の暮らしがどのようなものか、想像することができますか。私は、中米の小国コスタリカに留学しました。

 面積が約5万1千平方キロと日本の約7分の1、人口は約480万人と日本のわずか4%です。観光産業と、果物やコーヒーの輸出で主に成り立っています。物価は日本の6分の1くらいでした。経済水準が高いとはいえません。

 しかし、人々は「世界で一番幸せな国」であることに誇りを持っています。日本の多くの若者は1人でゲームをしたり買い物で楽しんだりしますが、コスタリカの人は、家族や友人で集まって、話したりダンスをしたりすることが一番の楽しみです。週末やテストの後など何かあるたびに「フィエスタ(お祭り)」と称して、誰かの家に集まるのです。

 コスタリカは1949年に軍隊を廃止しました。そして、軍事に費やしていたお金が教育や福祉に使えるようになりました。識字率は96%と、他の中米諸国に比べて高いです。

 留学中、北隣のニカラグアを訪ねた時のことです。物売りする子どもが道にあふれていました。コスタリカとは全く違う光景でした。レストランで食事をしていた時には、おなかがすいていると食べ物をせがまれました。満足に食べることもできず、学校に行けないまま働かなければならない現実を目の当たりにしてショックを受けました。

 道ですれ違った知らない人でも、助けたり、あいさつから会話が始まったり。私たちは、そんな幸せな国コスタリカから、豊かさのヒントを得られるのではないでしょうか。(高1高矢麗瑚)

(2015年2月23日朝刊掲載)

年別アーカイブ