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ジュニアライター発信

『ジュニアライター発』 「空白の10年」真実共有 原爆投下後 援助ない期間 講演会に参加 「伝える」使命を実感

 原爆投下後の「空白の10年」をテーマにした講演会が、広島市中区の広島国際会議場でありました。中学・高校生ら若い世代に被爆の真実を伝えたいと、広島県被団協(ひだんきょう)(坪井直(すなお)理事長)や大学生たちが開催。ジュニアライターも20人が参加しました。(高2新本悠花)

 「空白の10年」とは、原爆投下への非難を恐(おそ)れた占領軍の報道規制「プレスコード」などによって、正しいことが伝えられず、被爆者に対する援助(えんじょ)の手もほとんど差(さ)し伸(の)べられなかった期間のことです。

 講師は、12歳(さい)の時、爆心地から約1・5キロで被爆した池田精子さん。顔から体の半分にかけてやけどを負いました。病院で治療(ちりょう)を受けたものの、やって来た父親に気付いてもらえないほどの変わりようだったといいます。傷がひどく、周りの人たちは「(間もなく)死ぬだろう」と話していたそうです。

 退院後も、外出すると子どもたちから「赤鬼が来た」と言われるなど、周囲の無理解や差別に苦しみました。人々の目が気になって、死を考えるようになりました。でも、父親が知人に「今度空襲(くうしゅう)があれば、精子と一緒(いっしょ)に死ぬ。もう逃げない」と言っていたと後で聞いて、生きなければいけないと思ったそうです。

 「憎(にく)しみがあるところには平和はなく、核戦争に勝ち負けはない」。最後にそう言われました。人間が憎しみを乗(の)り越(こ)えるのは容易ではないでしょう。でも、殺し合うだけで何も生み出さない戦争をなくすために、世界の人たちみんなが努力して、憎しみを乗り越えなくてはならないと思います。

 また、「空白の10年」が被爆者の方々を苦しめたことを知りました。原爆に関する全ての真実を広く伝えて行くことが何よりも大切であり、それが私たちの世代の使命なのだと感じました。

(2015年4月20日朝刊掲載)

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