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ジュニアライター発信

[ジュニアライターこの一作] 「いわたくんちのおばあちゃん」(天野夏美作・はまのゆか絵) 写真は誰もが笑顔で

 「いわたくん」のおばあちゃんが、なぜ一緒(いっしょ)に写真に写りたがらないのかを、小学4年の「ぼく」が教えてくれる話です。読んでいるうちに、「ぼく」が理由を聞いた「いわたくん」のお母さんから、一緒に話を聞いている気分になります。

 1945年8月初め、おばあちゃんの一家6人は空襲(くうしゅう)を避(さ)けて田舎に引っ越す疎開(そかい)を前に、広島の自宅の和室に勢ぞろいし、家族写真を撮(と)りました。しかし、出来上がりを見ることができたのは、当時16歳のおばあちゃんだけでした。原爆が落とされ、両親と妹3人を失ったからです。

 たった一つの爆弾が落とされた日を境に、写真を撮った家族と、ずっと会えなくなるなんて、私には悲しくて想像できません。小学生のころ初めて読んで、泣きそうになりました。

 最後に、「ぼく」は「戦争せんけえね」と何度も繰(く)り返します。戦争は過去の話ではありません。現在も世界では戦争が起きています。大切な人と写真を撮っても、その写真を一緒に見ることさえできない、悲しい戦争を、未来の話にしたくありません。誰もが笑顔で写真に写ることができる世の中にしていきたいです。(高1鼻岡舞子)

(2015年3月16日朝刊掲載)

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