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ジュニアライター発信

[ジュニアライターこの一作] 「ふたりのイーダ」(松谷みよ子著) 戦争の恐ろしさ痛感

 主人公の直樹が不思議な家での体験を経て過去の広島での悲劇を知っていく物語です。

 印象に残っているのは、不思議な家の食堂にあった「(紀元)二六〇五年」の「6日」で止まっている日めくりカレンダーです。「きれいな鳥が二羽、日の丸をまん中にして舞(ま)っている絵」という描写(びょうしゃ)と併(あわ)せ、戦時中の雰囲気(ふんいき)や原爆の影を感じ、恐怖を覚えました。

 不思議な家には、「イナイ、イナイ…」と言って動き回るいすがありました。ある朝早くに家を出たまま帰ってこないおじいさんとイーダを待ち続けていたいす。私ははじめ気味が悪くてたまりませんでした。しかし、住人を待ち続け、大切な人を失ったことを認めたくないという、いすの思いは、戦争を体験した人たちにも通じます。読んでいくうち、気味の悪さは薄(うす)らぎ、共感を抱くようになりました。

 戦争体験者が少なくなった今、日本そして世界の人々がつらい思いをしないよう、一層、平和の大切さや戦争の恐(おそ)ろしさを考えていかなければならないと思いました。(中1斉藤幸歩)

(2015年10月19日朝刊掲載)

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