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ジュニアライター発信

[ジュニアライターこの一作] 「ぼくのこえがきこえますか」(田島征三作)

大切な命 伝え続ける

 日本の童心社と中国、韓国(かんこく)の出版社(しゅっぱんしゃ)による「日・中・韓平和絵本シリーズ」の1作です。文章は平仮名で書かれ、イラストは絵の具で描(えが)かれています。絵の具ならではの色や線で、場面ごとに登場人物の心情を表しています。

 主人公は「くにのために たたかえ」と周囲に励(はげ)まされて戦争に行き「めいれいだから」鉄砲(てっぽう)で人を殺します。しかし、敵の砲弾(ほうだん)が飛んできて死んでしまいます。彼(かれ)は魂(たましい)となり、人の心の中が見えるようになります。自分のしたことや、されたことに多くの疑問を抱(いだ)くようになるのです。

 「だれのためにころし、ころされるの?」。命を大切にするのは当たり前のことですが、生前の彼にはそういった考え方は、なかったのです。私は、命を大切にすることが当たり前の社会に生きていることに、感謝する必要があると思いました。

 最後に主人公は「せんそうのこと」や「あなたとおなじようにいきていたぼくたちのこと」を伝えたいと訴(うった)えかけます。二度と戦争を起こさないためには、過去の戦争を忘れてはならない、というメッセージが込(こ)められています。

 この絵本を読み、戦争は人の命や感情も奪(うば)うことを痛感しました。どのような形であれ「反戦の思いを伝え続けよう」という気持ちが強くなりました。(中2植田耕太)

(2017年10月30日朝刊掲載)

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