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ジュニアライター発信

[ジュニアライターこの一作] 「伸ちゃんのさんりんしゃ」(児玉辰春・作、おぼまこと・絵) 命奪う残忍さ伝える

 この絵本は、おじいちゃんの信男さんが孫に戦時中の話を語っています。

 信男さんの息子だった3歳(さい)の伸(しん)ちゃんは、三輪車をねだります。でも、戦時中の物不足でどこにも売っていません。そんなときに叔父(おじ)さんから三輪車をもらい、伸ちゃんは涙(なみだ)を流して喜びました。しかし、8月6日の原爆で、伸ちゃんは三輪車のハンドルを握(にぎ)ったまま幼い命を落としました。

 今は三輪車をすぐに買える時代ですが、戦時中はたくさんの人が食べるものさえなく、貧しく苦しい思いをしていたことが伝わってきました。欲しくてたまらなかった三輪車をもらったうれしさに浸(ひた)っていた子どもの命をあっけなく奪(うば)った原爆。私が信男さんの立場なら一生許せず憎(にく)み続(つづ)けていたと思います。

 最も印象に残ったのは信男さんの「日本のせいでアジアや世界中の人が死んだ。いや殺された。罪のない子どもまで」という言葉です。今も世界では、大人たちの身勝手な争いで多くの尊い命が失われています。この実話は私に戦争の惨(みじ)めさ、尊い命を奪うことがどれだけ残忍(ざんにん)で憎いことかを教えてくれました。(高1見崎麻梨菜)

(2015年9月7日朝刊掲載)

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