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ジュニアライター発信

はだしのゲンフィールドワーク

「あの日」の足跡たどる

 原爆投下後の広島でたくましく生きる少年の姿(すがた)を描いた漫画(まんが)「はだしのゲン」の主人公ゲンの「あの日」の足跡(そくせき)をたどるフィールドワークが4月27、28の両日、広島市内で開かれました。ほかの高校生や大学生と一緒(いっしょ)に準備を進め、案内役を務めました。

 初日の事前学習では、昨年12月に亡(な)くなった作者の中沢啓治(なかざわ・けいじ)さんの半生を追ったドキュメンタリー映画を見て、妻ミサヨさんの話も聞きました。ミサヨさんは「原爆を描くのは苦痛(くつう)だったろうけど、原爆を無くし、平和憲法(けんぽう)を守りたいと描き続けた」と夫の仕事を振り返りました。

 2日目は、漫画の基になった中沢さん自身の被爆体験と、ゲンが漫画の中でたどったルートを照らし合わせながら、被爆した神崎国民学校(現神崎小、中区)跡などを歩きました。

 私は、中沢さんの家族が下敷(したじ)きになって亡くなった生家について参加者に説明しました。漫画では、生家はゲンが母と出会う場所ですが、実際は火災のため近づけなかったそうです。

 初めて中沢さんの話を聞いたのは、2012年5月のトークイベント。反戦や平和への信念を感じ、中沢さんについてもっと知りたいと思っていました。しかし、その半年余り後に亡くなってしまいました。

 今回のイベントの前に、親交のあった人から話を聞いたり、漫画を読み返したりしました。被爆直後、6歳だった中沢さんが一人で家族を捜(さが)し回ったことを知り、その時の孤独(こどく)と恐怖(きょうふ)は、どれほどだっただろうか、と感じました。(高3・秋山順一)

(2013年5月13日朝刊掲載)

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