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ジュニアライター発信

『ジュニアライター発』 アンネ・フランク財団のフェルファーカさん

「歴史学び 相互理解を」

 「小さいかばんに本当に大切なものだけを入れて、持って行けるとしたら何を選びますか」。広島を訪れたアンネ・フランク財団(オランダ)東アジア担当のステファン・フェルファーカさん(65)は、私たちに尋ねました。これは、ナチスから逃(のが)れるため隠(かく)れ家(が)に移り住む前夜、アンネの父オットーが問うたことです。アンネは、ほとんどのものを捨てなくてはなりませんでした。

 アンネたちがナチスに見つかるまでの760日を過ごした隠れ家は、オランダのアムステルダムにあります。家では、窓は開けられず、音を立てられず、外にも出られません。隠れ家にはアンネと家族、知人の計8人が、見つかる恐怖(きょうふ)に耐(た)えながら息を潜(ひそ)めて暮らしていたのです。

 8人のうち、戦後、生きて帰ったのはオットーだけでした。隠れ家暮らしの協力者から手渡(てわた)されたアンネの日記を読んだオットーは、若い人に読ませたい、と出版しました。日記は多くの言語に訳されました。隠れ家は、戦争や人種差別に反対の思いを込(こ)めて、そのままの状態でミュージアムとして公開されたのです。

 アンネ・フランク財団は、今も戦争や差別に反対し、平和のために相互(そうご)理解を深める重要さを伝えようとしています。アンネの情報がほしい、という世界中からの依頼(いらい)に応え、各地でパネルなどの展示会も行っています。

 「アンネ・フランクやユダヤ人迫害(はくがい)の歴史を否定する人もいます。歴史を勉強してください。平和のために相手とコミュニケーションをとる力、理解し合える力をつけてください」。フェルファーカさんは、そんなメッセージを若者に送ります。アンネのように日記を書いてみるのもいいそうです。

 来年6月12日はアンネ生誕85周年です。フェルファーカさんは、この日にアンネの日記を朗読するなどして、彼女や平和への思いを巡(めぐ)らせてほしい、と願っています。(中3・中原維新、小6・藤井志穂、写真も)

(2013年10月7日朝刊掲載)

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