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ジュニアライター発信

『ジュニアライター発』 カンボジア訪問 途上国の過酷さに衝撃

 「ワンダラ(1ドル)、ワンダラ!」。カンボジアの観光地アンコールワットで、物乞(ものご)いや物売りの幼い子どもたちが、僕につきまといました。ガイドには止められましたが、僕は胸が痛み我慢(がまん)できなくなって、彼らから粗末(そまつ)なミサンガや笛を1ドルで買いました。

 7月13日から1週間、ボランティアグループ「ひろしま・カンボジア協会」のスタディーツアーに参加しました。日本の大学生がカンボジアに小学校をつくる実話を基にした映画「僕たちは世界を変えることができない。」(2011年、深作健太(けんた)監督)を見たのが、きっかけです。

 訪れてみて、映画から感じた以上に厳しい現実を知って衝撃(しょうげき)を受けました。北西部シェムリアップ郊外(こうがい)の村にある小学校で交流した時、入学する子どもは村全体の約8割にとどまり、その多くも読み書きができるようになったらやめて働き始めると聞きました。こんな状況(じょうきょう)を生んだのは、1970年代のポル・ポト派による内戦と大虐殺(だいぎゃくさつ)です。タイなど周りの国に比べ、経済発展や教育が遅(おく)れています。

 帰国後も、物乞いや物売りの子どもたちの姿が目に焼き付いて離(はな)れません。なぜ世界にはこんなにも経済格差があるのだろう。カンボジアの子どもたちを貧困から救うため、僕にもできることは…。

 思い悩み、映画「僕たち―」をカンボジアで撮影(さつえい)した深作監督に意見を聞きました。「自分たちの豊かな生活が、途上(とじょう)国の安価な原材料や労働力に支えられていると自覚することが大切だ。その上で、何ができるのかを絶えず心に問い続けることこそ、若い君たちの第一歩じゃないかな」。そう励(はげ)ましてくれました。  途上国の過酷(かこく)さを実感した中で、心に残ったのが子どもたちの輝(かがや)く笑顔でした。今日を生(い)き抜(ぬ)く力に満ちた表情を忘れないでおこうと思います。(高1松尾敢太郎)

(2014年8月25日朝刊掲載)

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