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ジュニアライター発信

ジュニアライター この一作 「夏雲」 生死分かつ苦悩記す

 原爆が落とされたきのこ雲の下には、きっと私と同じ年の女の子がいたでしょう。一瞬(いっしゅん)で消し去られた女の子、原爆を生(い)き抜(ぬ)くものの、生存者としての責任を負い続けなければならなくなった女の子。被爆当時、広島女学院の生徒だった方々や保護者が残した手記を編集した「夏雲」は、生死の分かれ目で翻弄(ほんろう)された女の子たちの苦しみを伝えています。

 広島女学院中高に入学し、自分の学校の歴史や被爆について学ぶ中で「夏雲」に出会いました。自分が通っている学校が被爆し、多くの生徒や教職員の方々が亡くなられたことを知り、無関心ではいられませんでした。「自分と同世代で自分と同じ学校に通っていた女の子が原爆で亡くなる」。彼女と私を分けたのは生まれる時期の相違(そうい)、たったそれだけなのだと中学生の私には衝撃(しょうげき)でした。

 被爆者の方が少なくなっている現在、以前にも増して文字による被爆体験の重要性は高まってきています。たとえ直接、被爆者の話が聞けなくなる時が来ても、私にとって「夏雲」は、先輩(せんぱい)たちの思いをしっかり受け止めていける作品です。(高3・木村友美)

(2014年6月2日朝刊掲載)

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