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ジュニアライター発信

ジュニアライター この一作 「いしぶみ 広島二中一年生 全滅の記録」 未来奪う残酷さ重く

 春は美しい桜並木になる平和記念公園(広島市中区)の西側の本川土手。原爆が落とされた時、おびただしい数の遺体が横たわり、負傷者が逃(に)げまどっていました。私は、この場に立ち、足元で起こったことについて考えました。とても重い過去を背負った場所だと思うと、穏(おだ)やかな風景がそうは見えなくなりました。

 「いしぶみ」は、ここで原爆に焼かれ、亡くなった広島二中(現観音高、西区)の1年生322人と先生たちの記録です。主に両親の証言からなります。生徒自身が生きて語ることは、決してできなかったのです。親と会えずに死んでいった生徒や、変わり果てたわが子を見つけた親の悲しみを思うと、やるせない気持ちになります。さらに読者に迫(せま)ってくるのは、たくさんの顔写真です。生きていた、という確かな証し。未来があるはずだった子どもたち一人一人の表情から、私は全てを奪(うば)う原爆の残酷(ざんこく)さを思いました。

 子どもは生徒として、大人は親としての目線から読むことができます。これからも手に取り、受け止め方の変化を自分の中で確かめていきたいです。(高3・市村優佳)

(2014年5月26日朝刊掲載)

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