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ジュニアライター発信

Peace Seeds~10代がまく種~ <1> 広島の平和研究施設

核廃絶を探求2機関

広島大平和科学研究センター/広島市立大広島平和研究所

 原爆が世界で初めて投下された広島市には、被爆地として核兵器や平和について学術的に研究し、学生たちを指導している大学の機関が二つあります。広島大平和科学研究センター(中区、平和科研)と広島市立大広島平和研究所(安佐南区、平和研)。そう遠くない将来に、被爆者から直接、体験や訴(うった)えを聞けなくなる日が来るのに備え、「平和」をテーマに人間性を高めた学生を育成したり、体系的な研究、発信をしたりして、核兵器のない世界の実現に向かって歩んでいます。

広島大平和科学研究センター

平和観の継承が使命

 広島大平和科研は1975年7月、「平和」をテーマとした研究施設を被爆地広島にと、国立大で初めて設立されました。広島大では、原爆放射線医科学研究所(南区、原医研)とともに、学術、医療の両面から原爆・平和について研究しています。

 平和科研教授の川野徳幸さん(47)は「平和の状態イコール原爆のない社会、という、広島の人の平和観を伝え続けるのが使命」と言います。被爆を体験していない人たちが原爆や、被爆、平和について語る時代が来るのを前に、原爆が投下された広島という「土台」の上で平和を研究し、学問として「核なき世界」の実現に向けたメッセージの発信が大切だと考えているのです。

 広島大は、1年生約2500人に平和科目の授業を受けることを義務付けています。2011年度から始めました。授業は「平和」をキーワードに、環境(かんきょう)や文学など、さまざまな問題を取り上げています。川野さんは「議論や思考力を深めて、人間性を高めてほしい」と学生たちの成長を期待しています。

 川野さんはまた「平和を探求する方法を通じて、深みのある学生を育てるとともに、あらゆる暴力を多面的に研究して成果を発信していきたい」と話していました。(高1福嶋華奈・写真も、中2上岡弘実)

広島市立大広島平和研究所

講演やシンポで発信

 広島市立大平和研は、核兵器廃絶や世界平和を実現するには、どうすればいいかを研究しています。その成果は、講演会やシンポジウムなどを通じて社会に伝えています。同大での授業や、市まちづくり市民交流プラザ(中区)で市民向けの講座も開催しています。

 所長の吉川元(きっかわ・げん)さん(62)は「被爆地である広島から平和に関する情報を発信するのは、他の地域で同じことをするより注目度が高い」と話します。

 平和研は、平和について学術的に考えようと、広島市が1998年4月1日に設立しました。市にとっては、原爆資料館などの運営を通して平和に向けた実践(じっせん)活動をしている広島平和文化センター(同)と対になっているそうです。

 平和研は、発足間もない98年8月から99年7月にかけて、「核不拡散・核軍縮に関する東京フォーラム」を、外務省の外郭団体「日本国際問題研究所」と主催。核軍縮に向けて国際的な提言をし、広島にも議論を行える機関がある点を世界にアピールしました。

 ただ、東京フォーラム以降は、個人での研究が主となり、平和研としての成果を発表する大きな機会がありませんでした。

 今後の目標として、核問題に関する年鑑(ねんかん)の発行を挙げる吉川さんは「平和研が総がかりで研究を行い、目に見える形で平和を実現させたい」と意気込(いきご)んでいます。

 また、核兵器廃絶については「小規模でもいいからまず条約をつくり、それから世界に広めていくべきだ」と語っていました。(高1谷口信乃)

<編集後記>

 憧れの広島大キャンパスに初めて入りました。大学教授の部屋は意外に広く、資料や本がたくさんありました。(高1・福嶋華奈)

 川野教授の話は難しかったです。私は、戦争のない状態イコール平和、と考えていたのですが、暴力などいろんな視点から平和を見られるというのは新鮮でした。もっとたくさんの知識を身に付けて、平和について説明できるようになりたいです。(中2・上岡弘実)

 僕は、核廃絶のためには、まず核を所持していない国がまとまり、核廃絶の条約に参加することが必要だと思います。日本は原爆を落とされた国として、率先して条約を作るべきです。(高1・谷口信乃)

 初めての取材でした。写真をとる係でした。一瞬を捉えるのは難しくて、プロのカメラマンはすごいと思いました。次はもっと質問をしたいです。(中2・岡田輝海)

 新コーナー「Peace(ピース) Seeds(シーズ)~10代がまく種~」では、平和な世界実現のために活動している中国新聞ジュニアライターが、さまざまな視点から「平和」を捉(とら)え、取材、紹介(しょうかい)していきます。随時(ずいじ)掲載(けいさい)します。

(2014年5月5日朝刊掲載)

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