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ジュニアライター発信

[ジュニアライターこの一作] 「さがしています」(作・アーサー・ビナード、写真・岡倉禎志) 遺品から持ち主思う

 原爆で亡くなった人たちが身に着けていた入れ歯や帽子(ぼうし)、バッグなどが、もう会えない持ち主への思いを語っています。写真と文章でつづられたこの本は、広島の原爆資料館で保管されている遺品が主人公です。

 特に心に残ったのは「ソウチ」という名前の男の子の小さな手袋(てぶくろ)です。この手袋をはめて、火事のときに燃え広がらせないための建物疎開(そかい)作業をしていました。結局は火事どころか、町全体を焼いた原爆を受けて、次の日に亡くなりました。

 遺品から、ソウチは死ぬ瞬間(しゅんかん)まで、子どもらしくない、つらい作業をさせられていたことが分かります。せめて最期は、教室で楽しく遊びや勉強をしていてほしかった。あまりにかわいそうです。

 僕(ぼく)はジュニアライターになってから、被爆者のお年寄りの体験を聞く取材をしています。20~30年後、同じことはできないでしょう。でも、遺品を見ながら、自分の心の耳をすますことはできます。例えば黒焦(こ)げの弁当箱から、持ち主のレイコさんが「ごちそうさま」とかわいい声を出し、小さな手を合わせていた姿を想像してみるのです。

 子どもも大人も、この本を読み平和への思いを深めるきっかけにしてほしいです。(中1ウォルシュ・フィリックス)

(2015年12月22日朝刊掲載)

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