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ジュニアライター発信

ジュニアライターが聞く 核廃絶 若者参画が鍵 ユース担当国連事務総長特使 アハマド・アルヘンダウィ氏

広島訪問 国内外に声届けよう

 核兵器も戦争もない世界を目指して取材・活動している中国新聞ジュニアライターが、被爆地広島を初めて訪れたアハマド・アルヘンダウィ・ユース担当国連事務総長特使(31)=ヨルダン=にインタビューした。アルヘンダウィ特使は、平和な世界に向け、政策決定の場に若者が参画する必要性を訴えた。一問一答は次の通り。

 ―初めて広島市を訪れた感想を聞かせてください。
 広島に落とされた原爆については、学校でも習ったし、本も読んで知っていたと思っていた。しかし、実際に原爆資料館を見学し、遺品、特に亡くなった人の装備品を見て、この場で、そう遠くない昔に起きたと実感した。悲惨さ、苦悩など言葉で言い表せない。

 また起きるかもしれない脅威が今もある。核兵器廃絶にさらに取り組んでいかないといけないと感じた。

 ―私たち若者は、核兵器のない平和な世界の実現のために何ができると思いますか。
 今、25歳未満の若者が世界人口の半数を占めている現実がある。そして「平和と安全保障」は、国連憲章にある3本の柱の一つだ。戦争で一番犠牲になるのは若者なのに、政治家や軍人、専門家が担当している政策決定には歴史的に若者が参画させられていない。それを是正する時が来ている。核廃絶、軍縮を進めるのは政治家や軍人の任務と思わない方がいい。

 それは、なぜか。この70年間できなかったからだ。若者たちが政治の場での話し合いに参画すべきだ。

 社会がそういうシステムをつくってくれるのを待っていてはいけない。若者の役割が重要だと国内外に言ってほしい。ソーシャルメディアなどで自分たちの声を届け、政治のリーダーたちに、自分たちを交渉の場に参加させるよう要求していくことが大事である。

 ―核廃絶や社会問題に無関心な若者も多いのが現実です。どうしたらいいでしょうか。
 若い人の心に届くよう、歌やコンサート、ソーシャルメディアを使えば参画できるのではないか。会議という場だけでなく、多様化していかないといけない。また、政治的に意見が違っても、それぞれの人間が本来持っている価値は共通。非人間的な扱いをしてはいけないし、話し合って解決するべきだ。

 84年生まれ。フランスの欧州大学院で修士号取得。国際非政府組織(NGO)「セーブ・ザ・チルドレン」の緊急プログラム担当官や、世界銀行出資の「アラブの政策と参加を強化するための制度開発に関するアラブ連盟プログラム」のチームリーダーなどを務めた。

インタビューを終えて

 「人は政治的な部分などを考えることなく、人間の核心、根本的なところについて話し合うべきだ」。ユース担当特使の言葉にとても感銘を受けました。私たちは学校などがあって、世界中の人たちと常に話ができるわけではありません。しかし、この言葉は、ジュニアライター活動を後押しするとても強いものでした。これからも続けていきたいです。(高1溝上希)

 私たちの目をしっかり見ながら時に身を乗り出しながら、質問に真剣に答えてくれ、うれしかったです。また、被爆という惨事を乗り越えて、平和を呼び掛けている広島の人々を理解していて安心しました。私たちの最も伝えたい被爆者の思いが伝わっていると分かったからです。特使にはぜひ、このことをもっと広めてもらいたいです。(高2二井谷栞)

ユース担当国連事務総長特使

 国連の潘基文(バン・キムン)事務総長が2012年1月、自ら出した5カ年行動計画で「女性、若者との連携、支援」を最優先事項の一つとして挙げ、13年1月、アハマド・アルヘンダウィ氏(ヨルダン)を初のユース担当の特使として任命した。

(2015年9月7日朝刊掲載)

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