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ジュニアライター発信

オバマ大統領へメッセージ 中国新聞ジュニアライター8・6アンケート

 核兵器も戦争もない世界を目指して活動している中国新聞ジュニアライターは、被爆71年を迎えた6日に平和記念公園(広島市中区)を訪れた国内外の10代、20代計230人にアンケートをしました。

 5月、現職では初めて米国のオバマ大統領が訪れた被爆地広島―。若者は、この歴史的な出来事を、どう感じたのでしょうか。5段階で評価してもらい、オバマ氏へのメッセージを募集。核兵器廃絶への意識も聞きました。

 核兵器廃絶には賛成しながら現実的には難しいとする意識が浮き彫りになりました。訪問を評価したオバマ氏に対しては、「広島で感じたことを世界に発信して」「長崎、沖縄にも思いをはせて」と要望。ジュニアライターが同世代の気持ちを理解して広く伝えることで、若者の核兵器廃絶への意識をさらに高めていけたらと思います。(高3松尾敢太郎、福嶋華奈)

紙面イメージはこちらpdfdisp

質問1 核兵器をなくすべきだと思いますか

機運高める被爆地訪問

 「核兵器をなくすべきだと思いますか」という問いに、「はい」と答えた人は全体の9割を超す214人でした。一方、「どちらともいえない」「いいえ」と答えた人は合わせて16人で7%にとどまりました。意識の上では、ほとんどの若者が廃絶を望んでいます。

 安芸区の高校2年吉田菜々子さん(17)は「祖父の被爆体験を聞き原爆の悲惨さを知った。二度と核兵器が人を傷つけることがあってはならない」と強調。なくすべきだと考える理由として、「多くの命を奪う」など核兵器の非人道性を挙げる人が多かったです。日本人も外国人も多くが「なくすべきだ」と答え、国による違いは見られませんでした。

 原爆資料館を見学した福島県いわき市の中学3年小泉匠太朗さん(15)は「やけどした被爆者の皮膚を見て危険性を実感した」と話していました。被爆地訪問は廃絶への機運を高めます。(高3岩田壮、中原維新)

質問2 核兵器をなくせると思いますか

現実的な難しさを実感

 「核兵器をなくせると思いますか」という質問に、「はい」と答えた人は32・2%の74人。「なくすべきだ」と答えた人が9割を超えた質問1に比べ、現実的には難しいと感じている人が多い傾向が分かりました。

 理由として、「(核兵器が)抑止力として微妙な平和のバランスを保つのに役立っている」「世界の人々は思っている以上に核兵器の怖さが分かっていない」といった意見が目立ちました。一方、「廃絶への運動が広がっている」「みんなが自分のこととして核兵器について学ぶようになれば廃絶できる」など前向きな意見もありました。

 オランダから訪れたラクウェル・フェルゼンさん(18)は「もし全ての人々が廃絶に賛成すれば各国のリーダーも耳を傾けないといけない」と、市民がリードして政治を動かす大切さを指摘しています。(高3岡田春海、鼻岡舞子)

質問3 オバマ大統領の広島訪問を5段階で評価してください

世界への発信に肯定的

 オバマ米大統領の広島訪問に対し、「非常によかった」「よかった」と評価した人は198人と9割近くいました。「初めて現職として訪れた」「ヒロシマの被爆の歴史を世界に知ってもらえるきっかけになった」という肯定的な意見が多くありました。

 ただ、評価する人の中でも、滞在時間が短かった▽任期が終わる直前での訪問だった―などの不満も上がっていました。謝罪を求める声は海外の人からも聞かれました。ノルウェーから来た大学院生シオー・ホルスタッドさん(25)は訪問を支持しながら「謝罪すべきだった」と答えました。

 批判的な意見は、オバマ氏や米国に対し平和に向けた前進を期待する声の裏返しであり、それを無視してほしくないと思います。同時に、謝罪よりも未来に向けての建設的なメッセージを発信したことに目を向けていきたいです。(高3林航平、谷口信乃)

 このページはほかに、高2溝上希、坪木茉里佳、山本菜々穂、高1岡田実優、上岡弘実、中川碧、岡田輝海、岩田央、上長者春一、沖野加奈、中3藤井志穂、鬼頭里歩、川岸言統、溝上藍、プリマス杏奈、中2目黒美貴、伊藤淳仁、川岸言織、フィリックス・ウォルシュ、佐藤茜、中1植田耕太、森本柚衣が担当しました。それぞれの感想をまとめた編集後記は、ヒロシマ平和メディアセンターのウェブサイトで読めます。

(2016年8月8日朝刊掲載)

ジュニアライターの編集後記(感想)は次の通りです。  外国人にアンケートに回答してもらうよう努力したことで、いろいろな国の人たちの考え方を知りました。大学に入ったら、さらに多くの国の人々と交流したいです。(岩田壮)

 アンケートを集計する作業は地道で大変でしたが、多くの人の意見を基に、文章にまとめるのは達成感がありました。(岡田春)

 執筆中にカープの歓声がテレビから聞こえてきて、テレビ見たさに焦燥感をあおられました。記事を書き上げた時の喜びは、カープの勝利に比肩するものでした。(谷口)

 外国からの来場者もアンケートにきさくに協力してくれました。その中でも核廃絶を訴える声が多かったです。被爆地を訪れることでさらに思いが強くなってほしいと思いました。(中原)

 アンケートを受けて記事を書くのは初めてでした。アンケート結果の数字が意味するものを含ませながら文章で人に伝えるのは難しかったです。(鼻岡)

 チーム唯一の高校3年で初めてリーダーになりました。チームを引っ張っていこうと思いましたが、逆に助けてもらいました。(林)

 自分にとって最後の取材になりました。2年前に取材した時と比べて、アンケートを取るのに積極的に話しかけられるようになれたと感じました。また、いろいろな国の人の写真を撮ることができて楽しかったです。(福嶋)

 オバマ米大統領訪問という大きな出来事について聞いたアンケートの中で、意見の衝突を感じました。「日米はお互いに自らの加害について謝るべきだ」という一方で、「日本は謝る必要はない」という考えもありました。双方の意見を尊重し、公平な気持ちでアンケートをする難しさを感じました。(松尾)

 写真撮影を担当しました。恥ずかしがりながらもオバマ米大統領へメッセージを書いてくれた日本人の高校生や、快く応じてくれた外国人の男女…。一方、オバマ氏の訪問を不快に思ってか、断った中国人の男性もいました。メディアを通じてオバマ氏への感情が国によって違うことは知っていましたが、肌でその違いを感じた日になりました。(坪木)

 朝6時半集合で、炎天下の中頑張りました。アンケートをお願いして、回答してもらい、写真を撮るだけでなく、その最中のささいな会話が楽しかったです。全く知らない人だと思っていたら共通の知り合いがいたり、互いの学校の話をしたりして盛り上がりました。(溝上希)

 日本人も外国人も快くアンケートに応じてくれたので、スムーズに取材することができ安心しました。これからも僕たちがしっかり記事にして書き、発信していきます。(岩田央)

 10代、20代のみを対象にしたのでアンケート数が目標に届くか不安でした。しかし多くの若い人が、平和記念公園を訪れているのを見て、うれしく思いました。なぜなら、戦争と被爆の記憶が受け継がれているように感じられたからです。(上岡)

 暑い中、多くの人が答えてくれました。日本人だけでなく海外の人にも核兵器をなくすべきだという意見が多く、ヒロシマの悲しい経験が伝わっていくようでうれしかったです。(岡田輝)

 核兵器を廃絶したいが、難しいと考える人が多かったように思います。私たちがこのような活動を続けて、核は無くせると思う人を1人でも増やしていきたいです。(岡田実)

 沖縄から来た女性が、オバマ大統領に向けて「沖縄を助けて」とメッセージを書いたことが印象的でした。形は違っても、戦争はさまざまな地域に傷痕を残し、いまなお癒えていない現状を再認識しました。(沖野)

 アンケートに協力的に応じてくれる人、足早に行ってしまう人、自分の日本語が通じなかった人…たくさんの人がいました。もっと語学力があればと後悔したり、自分の未熟さを感じたりしました。ジュニアライターとしての原点の取材、無事に終わることができて良かったです。(上長者)

 今回の取材で私のグループは、初め、暑さなどに苦戦し、アンケートがあまり集められませんでした。途中の休憩中も足が痛くなったり、眠かったりで大変でしたが、後半は慣れてきて時間通りに終わらせることができました。来年8月6日の取材も充実したものになるといいなと思います。(中川)

 1番大変だったことは、英文で答えてもらったアンケートの和訳でした。言語は違っても、書いた人の気持ちを丁寧にくみ取ろうと気をつけました。これからも、外国人との交流を積極的に進めたいです。そのために、もっと平和と英語の勉強をしないといけないと感じました。(川岸言統)

 今年は昨年以上に外国人の来場者が多かったように思いました。午前中は、慣れないアンケート取材で話しかける勇気が出ず、なかなかスムーズに取材が進みませんでしたが、午後はテキパキと取材ができるようになったので良かったです。(鬼頭)

 平和記念式典の会場後ろにある冷水コーナーに行きました。炎天下の取材で冷たい水がおいしかったです。加えて、暑い中ずっと立って疲れているはずなのに、用意してくださった皆さんが笑顔で、とてもすごいと思いました。他にも準備やテレビ中継などさまざまな人の力で式典が行われていたのを感じて、感動しました。(藤井)

 協力してくれた誰もが、真剣なまなざしで答えてくれました。国籍を問わず、どんな若い人でも平和や核兵器について自分の意見をしっかり持っていることに驚きました。(プリマス)

 アンケートをとるのは意外と時間がかかり、大変でした。8月6日という特別な日で平和記念公園が神聖な雰囲気だったので、人々の声がより重たく感じました。「核兵器廃絶」の声が多く、実現の可能性があるなと思います。みんなの願う平和な世界になってほしいです。(溝上藍)

 時間がなくてもアンケートに答えてくれる人が多くいました。できるだけ協力してくれる気持ちがよく伝わってきて、みんな平和や核兵器に関心が高いことが分かりました。(伊藤)

 初めて8月6日の取材に参加しました。いろいろな国の人たちが一つの場所に集まる光景を見ました。多くの人が年前の悲劇をより知るために、広島を訪れています。世界の中でも関心のある人は少なくないと知り、勇気づけられました。世界中で忘れられてはいけないし、自分も伝えていきます。(ウォルシュ)

 アンケートをしていて、11時30分くらいに外に出た時にほんの少しだけ頭が痛くなって、その後の休憩の時には頭を振ったら痛くなるくらいの頭痛になってしまい、寝込んでしまいました。みんなが心配してくれてうれしかったです。(川岸言織)

 外国人に質問した時、私は英語が話せないので身ぶり手ぶりでの説明になってしまいました。それでも、先輩の助けもあり、なんとか質問を終えることができました。外国人も、「thank you」しか言えない私に優しくほほ笑んでくれました。国を越えたつながりは素晴らしいな、そして英語力を上げたいなと思いました。(佐藤)

 アンケートで核兵器廃絶は「現実的に不可能」と答える人が多かったのですが、だからといって諦めてはいけません。私はあらためて廃絶に向けて思いを強くしました。(目黒)

 夏の暑さが体に染みます。1945年もこんな暑さだったのだろうと考えながら参加しました。そして今回、式典の参加者にアンケートを取りました。アンケートの答えを読んで、人それぞれ平和に対する意識が高いなと実感しました。(植田)

 初めて8月6日の取材をしました。多くの外国人が平和記念公園に祈りに来ているのを見て、みんなヒロシマに関心があるのだなと驚きました。「これからも頑張って」と声を掛けてくれる人もいて、とても励みになりました。(森本柚)

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