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ジュニアライター発信

[ジュニアライターこの一作] 「アンネ・フランクの記憶」(小川洋子著) 差別の恐ろしさ身近

 著者の小川洋子さんは、「アンネの日記」を読んだのがきっかけで小説家を志しました。ナチス・ドイツの迫害(はくがい)を受け、強制収容所で15歳の生涯(しょうがい)を終えたアンネ・フランク。小川さんが「本当の友達」のように感じていたアンネの足跡(そくせき)をたどり、エッセーにまとめたのがこの本です。

 小川さんは、アンネの家族を支援(しえん)した女性や、アンネがユダヤ人中学で学んでいたころの友人を訪ねます。アンネが使っていた小花の模様の化粧(けしょう)ケープが大切に残されていることや、髪を縦巻きにするのに凝(こ)っていたエピソードも書いています。おしゃれが好きな少女の姿が目に浮(う)かびました。

 アンネが通っていたアイスクリーム屋さんも登場。ボーイフレンドにおごってもらっていたそうです。アンネという少女を身近に感じることができました。

 アンネは、私と同世代。たまたまその時代に生まれたことで差別され、殺されたのです。ナチスの恐(おそ)ろしさが一気に身近なところまで引き寄せられました。アンネのように、何の罪もない人々が殺されるような出来事を繰(く)り返(かえ)してはいけないと、あらためて感じました。(高2坪木茉里佳)

(2016年6月14日朝刊掲載)

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