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ジュニアライター発信

[ジュニアライターこの一作] 「ヒロクンとエンコウさん」(四国五郎・作/絵) 戦争は伝統さえ壊す

 主人公のきょうだいが、広島の川にすむ「エンコウさん」とともにタイムスリップし、被爆時や現代の広島の街を訪ねる物語です。

 本に出てくる猿猴橋(えんこうばし)は広島駅南口近くにある、今から90年前にできた橋です。「猿猴」の透かし彫(ぼ)りなどの飾(かざ)りがついた美しい橋だったことを知りました。しかし、戦時中、金属製の装飾品(そうしょくひん)は全て取り払われました。兵器の材料にするためでした。

 戦争は多くの人々の命を奪(うば)ううえに、みんなが大事にしてきたものを壊(こわ)してしまいます。それは許されません。昔からいろんな人に守られ、受け継がれてきたものを簡単に破壊(はかい)していいものではないと思います。しかも回収された金属は人を傷つける兵器となるのです。

 猿猴橋は今春、かつてあったタカや猿猴の飾りが復元され、完成当初の姿になりました。地元の人と同じように、私もうれしい気持ちになりました。

 これからは、伝統のあるものが、戦争による身勝手な理由で壊されることのないよう願います。私も、戦争の恐(おそ)ろしさなどについてもっと学び、戦争はいけない、と伝えていきたいと思います。(高2見崎麻梨菜)

(2016年6月6日朝刊掲載)

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