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ジュニアライター発信

[ジュニアライターこの一作] 「きけ わだつみのこえ 日本戦没学生の手記」(日本戦没学生記念会編)

家族案じて散った命

 太平洋戦争で亡くなった学徒兵75人が戦地や訓練所から家族や友人へ宛(あ)てた手紙や、日記、短歌、詩などをまとめた本で、1949年に初めて出版され、ベストセラーになりました。

 手記には、さまざまな思いがつづられています。表向きは「国のため」という思いで統一されていたのかもしれませんが、それぞれの個性が実感できました。

 そんな中、家族の無事や健康を案ずる内容がよく出てきています。家族にみとられず、明日死ぬかもしれないという状況にある時、家族の事を案じられるのでしょうか。そう考えた時、胸が押(お)しつぶされそうになりました。家族の心配よりも自分が生きていたい、自分が逃(に)げたら家族が大変なことになると分かっていても逃げ出したい。そう思いました。

 この手記を書いた人たちは大学で学んでおり、当時、反体制とされていた自由主義について知っている人もいます。国に対して批判的だった若者たちは、国のためにでなく、家族のために自分の命をささげようとしていたのではないでしょうか。

 他の人のために死ぬのが当たり前というのは、今の平和な世の中だったら信じられません。しかし戦争中だったら、自分も家族を思って死ぬのかな、と考えました。(中2伊藤淳仁)

(2016年11月21日朝刊掲載)

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