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ジュニアライターがゆく

[ジュニアライターこの一作] 「八月の光 失われた声に耳をすませて」(朽木祥著)

大切な言葉 語り継ぐ

 いくつかの話が折り重なって一つのメッセージを伝えています。「失われた声に耳をすませて」という登場人物たちの声です。中でも、読んでいて一番心が動かされたのは「水の緘黙(かんもく)」という章でした。

 原爆が落とされた日、周りの人を見捨てて逃(に)げたと後悔(こうかい)していた「僕」。気付くと、人々が焼けただれた影(かげ)となって、いつまでも追い掛(か)けてきます。そのことで心がいっぱいになり自分の名前すら忘れてしまった「僕」に、希望を与(あた)えたのは、見捨ててしまった少女が焼け死ぬ前に残した言葉と、真意を知るきっかけをくれた修道士の存在です。

 家のはりの下敷(したじ)きになっても、自分の前を通る人に少女が投げかけたのは「逃げて」という言葉でした。修道士と訪ねた少女の両親から聞き、あの日のことを覚えていかなければと決意します。

 きっと、あの影たちも、自分たちを忘れないでほしいと伝えたかったのでは。大切な人への言葉も、自分の生きた証しも残せず、亡くなってしまった人たちがいることを、知らなければいけないと思いました。まずは今発せられている被爆証言をしっかりと聞き、記憶を語り継ぐことが自分の役目だと感じます。(中3斉藤幸歩)

(2018年2月19日朝刊掲載)

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