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ジュニアライターがゆく

『ジュニアライター発』 ヒロシマから何ができる ICANフィン事務局長取材

“Keep up the pressure to make Japan sign the treaty! For Hibakusha!”

「核兵器禁止条約に署名するよう政府に働き掛けを続けて。被爆者のために」

 中国新聞ジュニアライターはノーベル平和賞を受賞し、広島を訪れた非政府組織(NGO)「核兵器廃絶国際キャンペーン」(ICAN(アイキャン))のベアトリス・フィン事務局長に取材しました。若者との対話集会に参加し、特別にインタビューすることもできました。(高1川岸言統、中2平松帆乃香)

若者に三つの力

■対話集会

 広島市中区の広島国際会議場であった対話集会で、フィンさんは「被爆者は苦しい記憶を思い出し、人類の過ちを繰(く)り返さないでくれと警告してくれた。核兵器禁止条約も被爆者がいないと存在しなかった」と感謝の気持ちを表しました。その上で「核軍縮は、新しい世代に委ねられている」と話し、キーを握(にぎ)る若者の「とてつもない力を持った三つの武器」を紹介しました。

①希望
 過去70年余りは、「恐怖」が国際関係を引っ張り、核兵器が世界をコントロールしたといわれる。しかし自分たちにとっては、希望こそが原動力だ。若い人が引き継いでほしい。

②エネルギー
 毎日毎日、「不可能なこと」をなし遂(と)げようと活動するのは、無邪気(むじゃき)すぎるといわれるかもしれない。だが、若い人たちが運動に加わるエネルギーを見ていると私もうれしくなる。一緒(いっしょ)にこの悲観(ひかん)主義を吹(ふ)き飛ばそう。

③ソーシャルメディア
 若者は新しい考えを持つ世界中の人とつながり、力を集めることができる。ソーシャルメディアを使えば、会わなくとも海の向こうの人に自分の考えを伝えられる。ICANを知らないグループともつながり、政治家に核兵器禁止条約に署名するよう求めるうねりになる。

 フィンさんはこう説明すると、続けて「核兵器が存在する以上、再び使われてしまうまでの時間は刻々と迫(せま)っている」と警鐘(けいしょう)を鳴らしました。米国のトランプ政権の考える核戦略は「より利用しやすい核兵器を造ること」といい、核の恐(おそ)ろしさを体験した日本こそ「核兵器禁止条約に参加し、核軍縮の先頭を走ってほしい」と訴(うった)えました。

 講演は最後に「核兵器を持つのは、恥(は)ずかしく不名誉(ふめいよ)なことだと保有国に伝えよう」と呼び掛(か)け、一人一人が声を上げる大切さを強調しました。フィンさんの迫力(はくりょく)は想像以上で、私たちも勇気づけられました。

同じ考えの人と連帯を/専門家になる必要ない

■質疑応答

 会場では次のような質疑応答がありました。

  ―フィンさんはいつから平和に関心を持ったのですか。(高校生女子)
 スウェーデンの中でも移民の多い地域で育ち、圧政や飢餓(きが)から逃れた人を多く見てきた。地球の反対側で起きたことがこちら側にも影響すると知り、世界の出来事を学ぶのが大切だと気付いた。若い頃から家族や友達が安全に生活してほしいと願うようになった。

  ―希望を持ち続けるのは難しい。どうすればいいですか。(高校生女子)
 誰(だれ)も一人では解決できない。同じ考えの人と目標に向け協力する中で、前向きな機運が生まれる。人権や暴力などの問題も100年前に比べると改善した。人類は良い方向に進歩すると信じ、広い視点を持ってポジティブになろう。

  ―日本の若者がもっと平和活動に関心を持つにはどうすれば。(大学生男子)
 私たちが専門家になる必要はない。問題は、核兵器が街を爆破(ばくは)し何十万人も殺すことが正しいのかどうか、ということ。複雑な条約や安全保障の政策まで話しだすと真偽(しんぎ)が見えなくなる。何もしないと、子どもに核兵器の使用という帰結(きけつ)をもたらすかもしれない。日本で選挙に行く若者は少ないと聞いた。投票に行ってほしい。

社会正義 やる気の源

■インタビュー

 フィンさんは短い時間でしたが、原爆資料館でジュニアライターのインタビューにも答えてくれました。世界中の外交官、政治家や市民に核兵器禁止条約が必要だと働き掛(か)けてきたICANのメンバー。「諦(あきら)めず続けるのは、どんな信念からですか」と聞くと「社会正義という大きな問題の一部として核兵器の問題にも取り組むことが、やる気の源です」と答えてくれました。

 条約に反対する核保有国のことをどう考えるのか。「他の国には絶対に持たせないが、自国を守るためには必要だとして(世界を)危険にしている」。それがフィンさんの言葉でした。弱い立場の人が一方的に傷つけられたり、脅(おびや)かされたりする世界ではいけない、という問題意識があるのだと思います。

 そして「皆(みな)さんの世代で解決しなければ、核兵器が再び使われる可能性は高い。若い人の力は本当に大切」と、あらためて若者たちへのメッセージを寄せてくれました。

(2018年1月22日朝刊掲載)

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