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ジュニアライター発信

[ジュニアライターこの一作] 「アヴェ・マリアのヴァイオリン」(香川宜子著)

戦争は傷残す絶対悪

 徳島県で暮らす14歳の少女あすかのバイオリンが、実は、第2次世界大戦中、同い年のユダヤ人の少女ハンナの楽器だったことから、物語が始まります。フィクションですが、主なエピソードは実話に基づいているそうです。

 ドイツで暮らしていたハンナは、ユダヤ人というだけでポーランドのアウシュビッツ強制収容所に家族と共に入れられます。そして、バイオリンが得意だったため、収容所のオーケストラの一員となり、強制労働に駆(か)り出される人や、ガス室に送られる人の前で、演奏を続けるのです。

 一方、ハンナの両親は強制労働で日に日にやつれ、命を落とします。終戦後、ハンナは収容所での体験がトラウマとなり、大好きだった音楽に拒否(きょひ)反応を示すようになります。戦争は、人の命や生活を奪(うば)うだけでなく、終わった後も、人々の心や体に深い傷を残すのです。

 私はこの本を読み、戦争は絶対悪だとあらためて感じました。戦争をなくすためには、広い心で人を許すことや、政治や国際情勢に関心を持つことが必要だと思います。ハンナのような境遇(きょうぐう)の人を1人でも減らすため、人ごとだと思わず、自分で考え、できることから行動していきたいと思います。(中2平松帆乃香)

(2017年9月4日朝刊掲載)

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