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ジュニアライター発信

[ジュニアライターこの一作] 「縞模様のパジャマの少年」(ジョン・ボイン著)

ホロコーストの悲劇

 第2次世界大戦中のナチス・ドイツによるホロコースト(ユダヤ人大量虐殺(ぎゃくさつ))を描いた物語です。フィクションとは思えないほどリアルに、収容所の残酷(ざんこく)な様子が伝わってきます。主人公の少年の目線で、淡々(たんたん)と描写されているからだと思います。

 主人公のブルーノは、軍人だった父の仕事の関係で、ベルリンから、地方の町へ引っ越(こ)します。都会と違(ちが)い、退屈(たいくつ)な日々を過ごしていたブルーノは部屋の窓から、フェンスに囲まれた施設(しせつ)を見つけました。父が働くその施設は、多数のユダヤ人たちが収容され、虐殺された強制収容所でした。

 ある日ブルーノは、親の目を盗(ぬす)み、こっそり収容所に近付きました。そして、がりがりにやせ、縞(しま)模様のパジャマを着た少年シュムエルと出会います。2人はフェンス越しにおしゃべりをし、友情を育みます。

 2人が交流を深めていく物語かと思って読み進めると、結末は、非常に悲劇的でした。読んでいて、とても胸が痛みました。

 戦争は、小さな子どもたちをも巻(ま)き込(こ)みます。この本を読み、戦時中に、ポーランドのアウシュビッツ強制収容所で実際にあった残虐な出来事や、戦争の痛ましさについて、あらためて考えさせられました。(高3山田千秋)

(2017年7月10日朝刊掲載)

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