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ジュニアライター発信

[ジュニアライターこの一作] 「トットちゃんとソウくんの戦争」(黒柳徹子、田原総一朗著)

つらい体験知る責任

 私はテレビで活躍(かつやく)する人にとても輝(かがや)いたイメージを持っていました。華(はな)やかな世界で仕事をする人に、人間的な戦争体験があるとはなかなか想像しにくいことでした。今では誰でも知る2人が体験を書き残したことで、私は知らないといけない責任感を持ちました。

 ジュニアライターが被爆証言を聴く「記憶を受け継ぐ」の取材で、原爆が落とされた日、他の人を助けられなかったため負い目を感じている人に会いました。話を聞いた時は、人類史上まれにみる悲惨(ひさん)な状況だったから、心の傷を抱(かか)えたのだろうと思っていました。

 黒柳徹子さんも本の中で、子どもの時の記憶に罪悪感を抱(いだ)いているとつづっています。再び帰って来ないであろう兵士を見送ったのは、「お駄賃(だちん)がわり」にもらえるするめが欲しかったからでした。良い思い出は戦後、苦くなり、後悔(こうかい)に変わりました。被爆や空襲(くうしゅう)といった被害の大きさにかかわらず、戦争は人々の心に傷を残したのです。

 著者の2人が意外に知られていない戦争体験や自身の平和感を発信したことで、多くの人に考えさせる機会を与(あた)えたのではないかと思います。(高2岡田実優)

(2017年4月11日朝刊掲載)

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