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ジュニアライター発信

[ジュニアライターこの一作] 「原爆詩集」(峠三吉作) 罪なき人の怒り代弁

 この作品は1945年8月6日に対して峠三吉さんが詩にしたものです。男女の区別もつかなくなるほどのやけどをおった人、人の姿を失った女学生。この詩集には人々の怒(いか)り、悲しみ、嘆(なげ)き、そしてたくさんの涙が書かれていました。

 激しい表現が多く、読んでいくのがつらかった中、一番印象に残ったのは最初の序の「ちちをかえせ ははをかえせ としよりをかえせ こどもをかえせ わたしにつながる にんげんをかえせ」の部分です。シンプルだけど人間としての生き方を失った人の思いを表していて、全身が震(ふる)える感じがしました。

 「わたしにつながる にんげんをかえせ」。原爆がなければ、人の輪が広がっていたはずです。なぜ何の罪もない人たちがこんなひどい思いをしなければならないのか、自分たちが何をしたというのか、その人々の怒りを代弁した言葉だと思いました。

 峠三吉さんはあとがきで「この詩集はすべての人間を愛する人たちへの贈(おく)り物(もの) そうした人々の警告の書」と書かれていました。あの日の出来事を絶対に忘れてはいけない、忘れたらまた同じ悲惨(ひさん)な歴史を繰(く)り返(かえ)してしまう。僕はそう感じました。この詩集はテロや核兵器が絶えない今の世の中にぜひ読んでもらいたいです。(高1岡田輝海)

(2017年3月27日朝刊掲載)

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