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ジュニアライター発信

[ジュニアライターこの一作] 「屋根裏部屋の秘密」(松谷みよ子著)

加害の歴史にも目を

 主人公のゆう子とはとこのエリコが「731部隊」の軍医だったエリコの祖父の過去と向き合う物語。実話を基にしたフィクションです。731部隊とは、戦争中に細菌(さいきん)兵器を開発するため、満州(現中国東北部)で人体実験をした旧関東軍防疫(ぼうえき)給水部の通称(つうしょう)です。

 エリコの祖父は亡くなる直前、屋根裏部屋にある段ボール箱について遺言を残します。その箱には、731部隊の資料が入っていました。戦後、孫たちにはやさしかった祖父が実は残酷(ざんこく)な人体実験に関わっていたのです。

 物語には、人体実験に使われ、命を奪われたリュウリィホァという少女の亡霊(ぼうれい)も登場します。「おねがい、わたしをもういちど燃やさないで」という彼女(かのじょ)の言葉は、とても印象に残りました。

 私は昨年、学校で731部隊について初めて学びました。それまで戦時中の日本の加害について知る機会があまりなかったので、とても衝撃(しょうげき)を受けました。被害だけではなく加害にも目を向け、戦争の悲惨(ひさん)さを伝えていかなくてはならないと思います。(高3中川碧)

(2018年5月14日朝刊掲載)

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