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ジュニアライター発信

[ジュニアライターこの一作] その時ぼくはパールハーバーにいた (グレアム・ソールズベリー作、さくまゆみこ訳)

戦争の恐ろしさ実感

 日本軍が米国の真珠湾(パールハーバー)を攻撃(こうげき)した時、ハワイに住んでいた日系米国人の少年を主人公に物語が進みます。僕も昨年5月、真珠湾を家族と旅行して来たので、とても興味を持ちました。

 攻撃前、主人公の少年たちは楽しい日常を送っていました。日系人でも、そうでなくても、一緒に野球をして遊んだり、父親と漁へ行ったりする日々…。しかし攻撃後、状況(じょうきょう)は激変します。日系人というだけで、主人公は米国人の同級生らから日本軍のスパイではないかと疑いをかけられ、父や祖父は証拠(しょうこ)もなく北米の強制収容所に連行されました。

 少年が直面した多くの悲惨(ひさん)な出来事は、平和な日常がどれだけ大切か、戦争が人々をどれだけ変えてしまうかを教えてくれました。僕は現地を訪れ、攻撃で多くの民間人も亡くなった事実を知りました。日本のやり方に対して疑問と憤(いきどお)りを覚えました。日本にいた時にはなかった感情でした。

 昨年12月、安倍晋三首相が真珠湾を訪問したことをきっかけに、この本を手に取る人が増えれば良いなと思います。核兵器も戦争も地上からまだ消え去っていない今、世界の指導者には、人々のかけがえのない日常を守ることを第一に考えてほしいと心から願います。(中3川岸言統)

(2017年1月16日朝刊掲載)

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