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ジュニアライター発信

Peaceあすへのバトン 10年目のジュニアライター卒業生の今 大学生 石井大智さん=神奈川県

大学の国際化 事例調査

 通っている大学で、留学生の受け入れ態勢が十分でないのを目の当たりにし、「大学の国際化」について研究をしています。自身や周辺の大学に通う留学生から話を聞くのに加え、海外の大学にも積極的に出向いています。

 きっかけは大学1年の秋。英語での試験を経て秋入学してきた学生に、必修科目の数学を教える機会がありました。台湾、韓国、フィリピン、米国―。住んでいた場所や、それまで学んできた学校によって、学生のレベルは大きく異なります。日本の中等教育を終えたことを前提にしている大学の授業に全員を合わせるのは難しい、と気付きました。住居選びの難しさや、学内の掲示板が日英で表記されていないことも気になります。

 「海外の大学ではどうなっているんだろう」。自身の大学や、所属しているサークルのプログラムなどで、大学に入ってからの1年8カ月で9カ国・地域を訪れました。今年1月に訪れたタイのチュラロンコン大には留学生用の住居があり、国際センターの機能も整っていました。一方、昨年末に行ったインドネシアのバンドン工科大では留学生用住居はなく、学内の案内に英語が少なかったように思います。

 今年9月にはガーナ大を訪問。同大の学生と交流しました。驚いたのは、学生のトップのリーダーシップの強さです。「大学を取り囲むガーナ社会が混沌(こんとん)としているからこそ、学生が自治を果たそうとしている」と感じました。

 日本国内でも留学生に聞き取りしたり、日英の学生会議で話を聞いたりしています。

 国内外での研究では、ジュニアライター活動で培った、正確な取材を心掛ける経験が役に立っています。「大学の制度と実情が懸け離れているケースが多いからこそ、現場の声を正しく聞く能力が求められる」と考えるからです。複数の事例を連関させる力も生かせています。

 来年は、大学の交換留学生として3~6月に韓国の延世大、6~8月には香港大に行きます。延世大は、アジアでも国際化が進んでいる大学の一つ。「全ての授業が英語。何でも好きな授業を選んで受けられるのが楽しみ」と言います。留学生の住宅事情や就職サポートについても調べるつもりです。

 ただ、韓国語の事前学習はせずに渡航します。「日本語が分からず日本に来る留学生も多い。同じような状態に身を置きたい」からです。

 大学卒業後は、大学院でさらに、この研究を進める考えです。そして、将来は「日本の大学システムや、外国人の人材活用法を変えられる人になりたい」と夢を描きます。(二井理江)

 「あすへのバトン 10年目のジュニアライター 卒業生の今」は、これで終わります。

(2016年12月19日朝刊掲載)

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