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ジュニアライター発信

『ジュニアライター発』 パレスチナの女性自立支援 水本さんに聞く 

依存しないビジネスが重要 現地の需要に応じた内容に

 市民団体「サラーム」(パレスチナの女性を支援(しえん)する会、広島市西区)の水本敏子(としこ)さん(57)=中区出身=が広島に戻ったのを機にインタビューしました。

 「サラーム」は、パレスチナの女性が伝統の手刺(し)しゅう技術を生かして商品を作り販売することで自立を支援しています。現地で活動している水本さんは、1991年の湾岸(わんがん)戦争で傷ついた人々に何か支援ができないかと、95年にパレスチナへ渡(わた)りました。

 そこで、自分が働いてきた洋裁分野と、現地女性の刺しゅう技術を結び付けてビジネスにしようとしました。現在約50人のパレスチナ女性がフェアトレード商品を作っています。

 水本さんは「支援に依存しないビジネスが重要」と語ります。例えば、縫(ぬ)い目がずれている商品をそのまま売ることは、買い手に甘(あま)えている、というのです。私は、慣れると自立が難しくなる、という支援の負の部分を初めて知りました。

 また、「現地の需要(じゅよう)に応じた支援をしなければいけない」とも語ります。その土地の実情を考慮(こうりょ)しなければ本当の意味で支援とはいえないのです。

 また、話を聞いて宗教についても深く考えさせられました。自分の生活になじみのない宗教のしきたりを理解した上で、20年余り活動してきた水本さん。価値観の違(ちが)いを認め合うことが大切だという言葉をよく耳にします。しかし、言うほど容易なことではなかったように思います。相手の価値観を拒絶(きょぜつ)するのではなく、理解しようとすることが重要なのだと気付きました。支援の輪を広げるには、まずはパレスチナについて知ることから始めるべきだと思います。(高2山本菜々穂)

(2016年12月13日朝刊掲載)

 水本さんを取材した他のジュニアライターの感想は次の通りです。

 ★日本とは全く異なった文化である、水本さんが語るパレスチナは私にとってとても新鮮でした。よく、新聞やニュースで耳にするパレスチナは難しくよく分からないことだらけで、ただ、パレスチナは危ないという偏見だけを持っていました。しかし、パレスチナにも魅力的な文化があることを知りました。 偏見だけで物事を見てはいけないと感じた取材でした。(高2山田千秋)

 ★今回の取材で、パレスチナの問題の複雑さを実感しました。日本を含む海外からの支援が行き届いていないこと、現地の人のニーズに応えられていないことを聞いて、支援は、まず現地を見ることが大切だと強く感じました。支援の形は現地の様子を広く伝えることから、資金・物資援助までさまざまですが、自分が支援する立場になったら、まず求められているものを知るところから始めようと思いました。(高1上岡弘実)

 ★水本さんは、「支援を続けていると、それが当たり前になって自立が難しくなることがある」と言いました。つい先日、フィリピンの貧困地域でボランティアをした高校生に取材したときも同じような言葉を聞き、どこでも同様な問題があることを初めて知りました。私たちは、「支援をしてあげる」という気持ちになってしまうこともあります。また、受ける側の人々も、支援されることに慣れているのではないでしょうか。現地の人のことを考え、自立へと導けるような策が大切であると、両者の意識を変えることが必要だと思いました。(中2目黒美貴)

 ★話を聞いて心に残ったことがあります。それは、今も続く男性中心の社会。そんな社会だからこそ、水本さんが支援している活動の場は、女性メンバーのみで男性に気を使わなくて済むようにしています。それは、パレスチナの女性たちのことを理解していないとできないことです。水本さん自身、パレスチナで何度も命の危険に遭いながらも活動を続けて今に至ります。私たちにできることは、パレスチナや政治に興味を持つことだそうです。私自身パレスチナについてあまり知らなかったので、もっと学びたいと思いました。(中2斉藤幸歩)

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