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ジュニアライター発信

[ジュニアライターがゆく] 8・6へ オススメの一冊

 学校の図書室や書店に行くと、原爆や戦争、平和に関する本がたくさん並んでいます。中国新聞ジュニアライターは、新型コロナウイルスの影響で休校が続き、自宅で過ごす時間が増えた春の間に、同世代のみなさんに読んでほしい1冊を選びました。被爆75年目の8月6日が近づいてます。漫画(まんが)や絵本を手に取ってみるのもいいかもしれません。家族や友人と一緒に読んでみたり、平和学習に役立てたりしてみませんか。

いわたくんちのおばあちゃん 天野夏美

最後の一枚 今も心に傷

 この絵本は実話に基づいています。主人公は小学4年生の男の子。学校の平和学習で、6年生の「いわたくん」のおばあちゃんである「ちづこさん」から被爆体験を聞くお話です。ちづこさんは、原爆を経験してから、家族と一緒に写真を撮りたがりません。なぜでしょうか。

 当時16歳だったちづこさんは、1945年8月のある日、両親と3人の妹と一緒に自宅の居間で写真を撮りました。広島も近いうちに空襲(くうしゅう)の被害を受けるだろうと考えた両親が、郊外へ疎開(そかい)をする前に、家族の記念写真を残そうと思ったからです。

 数日後、広島に原爆が投下され、ちづこさんは学徒動員先の缶詰工場で被爆。両親と3人の妹たちは全員命を奪(うば)われ、家は跡形(あとかた)もなくなってしまいました。

 独りぼっちになったちづこさんは数カ月後、写真館の人から奇跡的に残っていたあの写真を受け取ります。そこには、二度と会うことができなくなった家族の姿が写っていました。

 原爆は被爆者の身体だけでなく、心にも深い傷を残しました。あとがきの「戦争はひょっとしたら『未来の話』になるかもしれない」との言葉に、私は戦争を過去の話だと思い込んでいたことに気付きました。戦争を繰(く)り返さないように、平和を未来につなげていくことの大切さを感じました。(中3中島優野)

平和をつくるを仕事にする 鬼丸昌也

できること まず第一歩

 筆者は大学生の時、カンボジア北西部のシェムリアップを訪れました。そこで内戦によって埋められた地雷の除去(じょきょ)現場や被害を目の当たりにし、「自分に何ができるのだろう」という問いが生まれました。

 考えた末に導(みちび)き出した答えは「必ず自分にできることがあるはず」ということでした。自分で地雷を無くすことはできないけれど、地雷の被害を伝えることならできると考えました。小さな力が集まれば大きな力になるのです。

 この経験から、筆者は地雷の撤去(てっきょ)や子ども兵の社会復帰などを支援するNPO法人を設立しました。カンボジアの現状を伝え、支援が必要な地域に足を運ぶ活動を始めました。

 私も自分にできることを考えてみました。フェアトレードの商品を買う、家族や友人と社会問題について話し合うなど、すぐできそうなことが何点か思い浮かびました。できないことを悔(く)やむのではなく、今できることから始めることが、平和づくりの第一歩です。未来をつくる力が誰にでもある、と勇気を与えてくれる1冊です。(高2柚木優里奈)

Hiroshima’s Revival まんがで語りつぐ広島の復興 小学館クリエイティブ

「一番電車」 少女の苦悩

 この漫画は、被爆後の広島の復興をテーマにした10の物語を英語で紹介しています。私が1番心に残っているのは「市内電車を走らせた女学生」の話です。

 主人公は当時、広島電鉄家政女学校に通っていた堀本春野さん。私たちと同年代の16歳でした。爆心地から2.1キロにあった学校の寮(りょう)で被爆しました。ひどい下痢(げり)に苦しみながらも、原爆投下の3日後に「一番電車」を己斐駅から西天満町まで走らせました。

 堀本さんは車掌として乗務しながら「中心部に行けば、離れて暮らしていた母が見つかるかもしれない」との思いを抱(いだ)きました。しかし、電車の中は家族を捜(さが)す人であふれ、市民のために運転をし続けなければなりません。私は、その姿に胸がいっぱいになりました。

 もし自分が同じような状況にいたらと想像すると、ページをめくる手がしばらく止まりました。唯一の心の支えであったであろう母親を捜すことを諦(あきら)めて仕事を続けることは、なかなかできることではありません。広島の復興に尽力(じんりょく)した人たちに焦点(しょうてん)を絞(しぼ)った本は珍しいので、多くの人に手に取ってもらいたいです。(高1岡島由奈)

【原爆】
◎ピカドン だれも知らなかった子どもたちの原爆体験記(講談社編)
◎いしぶみ 広島二中一年生全滅の記録(広島テレビ放送編)
◎夾竹桃物語「わすれていてごめんね」(緒方俊平)
◎新版 広島長崎修学旅行案内―原爆の跡をたずねる(松元寛)
◎光に向かって這っていけ 核なき世界を追い求めて(サーロー節子/金崎由美)
【戦争】
◎核兵器はなくせる(川崎哲)
◎なぜ、おきたのか?―ホロコーストのはなし(クライヴ・A・ロートン)
【国際支援】
◎私の仕事 国連難民高等弁務官の10年と平和の構築(緒方貞子)
【漫画】
◎ユーカリの木の下で(中沢啓治)
◎母ちゃんの祈り 生きるんだ(ごとう和)
◎夕凪の街 桜の国(こうの史代)
【絵本】
◎ひろしまのピカ(丸木俊)
◎さがしています(アーサー・ビナード)
◎生きているかぎり語りつづける―谷口稜曄(すみてる)さんが世界中に伝えたいこと(舘林愛)
◎すみれ島(今西祐行)

(2020年6月22日朝刊掲載)

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