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核なき世界への鍵

[核なき世界への鍵 禁止条約に思う] ナガサキ・ユース代表団5期生 光岡華子さん

被爆証言 心に刻み行動

 核兵器禁止条約が採択され、被爆者の長年の訴えが「形になる」とはこういうことなのかと深い感慨があった。物事を動かすのは国と国という枠組みでなく、人と人のつながり。市民社会の声が重んじられた結果だ。

  ≪ナガサキ・ユース代表団5期生として3月、核兵器禁止条約の制定交渉会議が開かれていた米ニューヨークの国連本部を訪問。広島市南区出身の被爆者、サーロー節子さん(85)=カナダ・トロント市=のスピーチも聞いた。≫

 交渉に参加しなかった日本政府の机上に、皮肉にも折り鶴が置かれていたのが衝撃的だった。国際社会は日本の役割に期待していると思っていたが、むしろあきれられているのではないか。国と、個人との意見のギャップに違和感を抱かずにはいられない。サーローさんが全ての力を振り絞って証言されているのに、なぜ日本政府はこの場にいないんだろうという悔しさから涙がこぼれた。

 米朝関係も緊迫する中、核保有国と「核の傘」の下にある国をいかに巻き込むかが課題だ。条約の存在は、「国際的に禁止されている」と主張する根拠になる。政府が条約の批准に反対しても、市民レベルのうねりがあれば必ず声は届くはずだ。

 3月、代表団の勉強会の一環で広島市を訪問した。原爆資料館(中区)の展示は、一人一人の人生が一瞬にして奪われた事実がよく伝わる手法だった。核抑止の論理は、その非人道性を知らないから言えるのだと思う。多くの人が被爆地を訪れ、核兵器が人類にもたらす非人道性を理解することが連帯に欠かせない。

 ≪長崎市では今夏、反核平和運動をけん引した被爆者で、日本被団協代表委員だった谷口稜曄(すみてる)さんと、元長崎大学長の土山秀夫さんが相次ぎ亡くなった。≫

 原爆被害を直接知る人がいない時代が来る。私たちは被爆者から直接話を聞ける最後の世代になるかもしれない。いずれはこの世代から世界のリーダーが輩出されるので、若いと言われるうちに動きたい。

 核兵器廃絶へ鍵を握るのは同世代や今の中学、高校生。平和教育の出張授業を担うNPOを立ち上げられないか、構想を練っている。核兵器の脅威を自分の人生の問題として捉えることができたら、「持つ」という選択肢はあり得ない。(聞き手は野田華奈子)

みつおか・はなこ
 1995年、佐賀県嬉野市生まれ。現在は長崎大教育学部4年。今年1月から、長崎県と長崎市、同大の3者でつくる核兵器廃絶長崎連絡協議会主催の人材育成プロジェクト「ナガサキ・ユース代表団」の5期生として活動している。

(2017年10月1日朝刊掲載)

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