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核なき世界への鍵

[核なき世界への鍵] 核兵器禁止条約を採択 国連会議 前文で「被爆者」言及

 米ニューヨークの国連本部で開かれていた「核兵器禁止条約」の制定交渉会議は最終日の7日、条約案を賛成多数で採択した。国際条約として初めて核兵器の使用や開発、保有など関連活動を全面的に禁じる。前文では「核兵器使用の被害者(被爆者)の耐えがたい苦しみと被害に留意する」と言及。核保有国が交渉不参加の中、廃絶を目指す非保有国でまとめた。50カ国が批准して90日後に発効する。(ニューヨーク発 水川恭輔)

 投票結果は賛成122。唯一オランダが反対した。棄権は1だった。条約は全20条。前文で核兵器使用の非人道性や、既存の国際法下での違法性を明記する。禁止行為には核兵器使用の威嚇も盛り込み、核抑止力に依存する安全保障政策を否定する内容。保有国が核兵器をなくす前でも、定められた期限までに国際機関の検証を受けて廃棄をするならば加盟を受け入れる。

 核被害者への援助に関しては、使用・実験をした国の責任と、国連の枠組みや非政府組織(NGO)を通じた国際的な推進を強調している。9月20日から各国が条約への署名を開始。50カ国の批准を経て発効してから1年以内に最初の締約国会議を開き、非締約国やNGOにオブザーバー参加を招請する。

 条約制定の動きは、国際社会での核兵器の非人道性に対する認識の広がりや核軍縮の停滞を背景に、オーストリア、メキシコなどが主導。昨年の国連総会で条約の制定交渉開始が決議された。ことし3月の第1回会期を経て、5月にホワイト議長(コスタリカ)が草案を公表。6月15日から第2回の交渉を進めてきた。

 国連によると、交渉にはコスタリカなど非保有120カ国以上が参加した。一方で、法的禁止による国際安全保障への悪影響や、段階的な核軍縮を主張する米ロなど、保有全9カ国がボイコット。条約が実際に核兵器の削減につながるかどうかは不透明だ。

 米国の「核の傘」の下にある日本政府は第1回の初日に反対演説し、交渉には参加しなかった。平和首長会議会長を務める広島市の松井一実市長、広島・長崎の被爆者たちがNGO枠で発言し、会期内の条約制定や廃絶の実現を訴えた。

条約の実効目指したい

坪井直・広島県被団協理事長のコメント
 条約の採択を歓迎する。被爆者の念願がやっと具体的な形で表れたと感慨ひとしお。多くの国々、その政府を支える多くの人びとの思い、努力でこの成果に至ったのもうれしい。とはいえ、条約の内容が実際に効力を持つまで困難が横たわっていることも承知している。被爆者はもちろん、核兵器を拒絶する世界中の市民の力によって、条約の実効を目指さねばならない。

(2017年7月8日朝刊掲載)

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