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連載・特集

戦後75年 しまね継承の夏 <中> 雲南市遺族会会長 難波幸夫さん(79)=雲南市大東町

戦争証言 次世代に託す

 「戦争を語り継ぐ大きな使命感を痛感している」。戦後75年。雲南市には2354人の戦没者がいる。遺族会会長として、継承への思いは日に日に増す。

 今年1月、約3年かけてまとめた「戦後七十五年史」を発刊した。戦争で父親を失った家族の生活など会員111人の手記を集めた。平和学習に活用してほしいと、市内の22小中学校や、図書館に無料配布。これまで遺族会が独自に証言活動を続けてきたが、市教委との連携を強めるきっかけとなった。

 「子どもたちにとって戦争や原爆は、歴史の一部になっている。暮らしている町で、戦争の犠牲者がいることを知らない子が多い」と危機感を抱く。会の会員数はこの3年間で約70人減り、高齢化も進む。証言活動のメンバーも5人程度まで減った。

 昨夏には青年部を発足。戦争を直接知らない孫、ひ孫世代を増やし、育成に力を注ぐ。「年代に関係なく、思いの強い人が伝える役割を担わないといけない」。

 しかし、新型コロナウイルスの影響は大きい。2013年から地元で始めた遺品や写真などを展示する「戦中戦後の暮し展」が延期に追い込まれ、市が毎年7月に催す戦没者追悼式も中止に。そんな中でも市とともに地元のケーブルテレビに要望し、7月中旬の3日間、追悼の言葉をテレビを通して1日3回述べ、平和の大切さを訴えた。

 6月末には感染予防策を徹底した上で、市内の掛合小で平和学習を開催。2歳の時、父親がニューギニア島で戦死し、いまだに遺骨が戻ってきていない自身の体験を語った。「時代がどう変わろうとも戦争は繰り返してはいけない。人を傷つけない、お互いを助け合う精神を学べるような機会をつくり続ける」。固く決意する。(高橋良輔)

県内の遺族会
 雲南市遺族会は2004年11月に6町村が合併して同市が誕生したのを機に、翌年10月、大東、木次、加茂、三刀屋、掛合、吉田の遺族会が統合して発足した。現在会員は792人。ほかに、県遺族連合会に加盟する松江市遺族連合会や、出雲、益田市遺族会など県内には16支部の遺族会がある。会員は合わせて計4062人。全国組織として日本遺族会(東京)もある。

(2020年8月10日朝刊掲載)

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