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社説・コラム

広島市立大院 平和学に博士後期課程新設 大芝亮研究所長に聞く

核問題巡る世界的拠点に

 広島市立大(安佐南区)は来年4月、大学院平和学研究科に博士後期課程を新設する。日本国内の大学では初めてとなる。平和学研究科長を兼務する大芝亮・同大広島平和研究所長(66)に狙いや今後の構想を聞いた。(桑島美帆)

  ―博士後期課程を設置するのはなぜですか。
 被爆者の高齢化が進む今、時代を超えて被爆体験や復興の記憶を継承し、核兵器廃絶に貢献する人材を育てることは被爆地の大学の使命だ。公務員やNGO(非政府組織)、メディア関係者も含め多様な学生を集めたい。

  ―どのような研究ができますか。
 広島でこそ学べる教育を縦軸に、そして国際法や国際政治学、社会学を横軸として学生が学び、世界に発信する能力を身に付けるための環境を充実させる。北東アジアの核問題や核兵器禁止条約をはじめとするグローバルな枠組みを巡る課題について、ヒロシマを現在のテーマとして捉えながら研究してもらいたい。

  ―先立って昨春に修士課程を開設しましたが、定員10人に届かない状況です。
 初年度が2人だったが、本年度は7人。平和学研究科をもっと知ってもらう必要がある。新型コロナウイルスの影響を注視しながら、留学生を積極的に受け入れる。来年度は韓国人と中国人向けの奨学金制度も開始し、国内外から学生を呼び込む努力を続ける。

  ―平和研は設置から22年がたちます。市民に向けた研究成果の発信力には、課題も指摘されています。
 時代の移り変わりとともに力を入れる研究分野も変わり、結果的に対外的な発信が明確でなかったかもしれない。原点に立ち返って「広島発の平和学」の研究を前面に打ち出すとともに、教育面では平和学研究科の充実を担っていく。長崎大核兵器廃絶研究センター(RECNA)と共同で、軍縮教育などにも取り組む。

  ―平和研は、広島の新たな平和研究拠点となる被爆建物の広島大旧理学部1号館に移転することが決定していますね。
 具体的なことはこれからだが、同じく移転を決めた広島大平和センターと、自律性を保ちながら連携したい。じかに被爆証言や遺構に触れることができる広島は、平和研究に欠かせないフィールドだ。資料の蓄積もある。国内外から訪れる研究者が増えれば、おのずと存在感が高まるだろう。ノルウェーのオスロ国際平和研究所のように世界的な研究拠点になり得る。

おおしば・りょう
 一橋大法学部卒。1989年米国イェール大博士号取得(政治学)。上智大法学部助教授、一橋大理事・副学長、青山学院大国際センター長などを経て、2019年4月から現職。専門は国際関係論。兵庫県芦屋市出身。

(2020年9月23日朝刊掲載)

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