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社説・コラム

[あの人 このヒト] 戦争遺跡の撮影を続ける 周防大島町戸田 佐藤正治さん(68)

写真に刻む平和の願い

 周防大島町の神社に立つ「武運長久」の字が刻まれた石灯籠、周防大島高に保存される機銃掃射を受け破れた本…。2007年から町内や柳井市などの戦争遺跡の写真展を毎年開く。「戦争を記憶する人が減る中、かつて身近に戦争があったと知ってほしい」と語る。

 父は満蒙開拓団で旧満州(中国東北部)に渡り、シベリア抑留を経験。母は光市の海軍工廠(こうしょう)で働いた。ただ生前、両親に体験談を聞くことはなく「戦時中の生活や苦労を尋ねなかったのが心残り。だからこそ戦争を知りたい」。04年から遺跡にカメラを向ける。

 撮影を始めた頃にあった防空壕(ごう)が崩れるなど戦争の証言者は少しずつ姿を消す。道が草木で覆われ、たどり着けない場所も多い。「戦後75年の時間を感じる」と残念がる。一方、「新たな戦争に向かわないよう少しでも抵抗したい」と気力の限り写真展を続けるつもりだ。(余村泰樹)

(2020年10月11日朝刊掲載)

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