×

社説・コラム

天風録 『マッハ8の贈り物』

 ロシアのプーチン大統領へのプレゼントは「1万ルーブルまで」がルールらしい。日本円にして1万4千円弱。それより高価なものは、モスクワ・クレムリン宮殿の博物館に収められるという▲今月7日、68歳の誕生日に受け取った贈り物は、極超音速巡航ミサイル「ツィルコン」の実験成功の知らせ。米国の迎撃システムもかいくぐれるとの触れ込みに、「世界に類例のない軍備だ」とご満悦の表情を見せた▲軍艦から発射されたミサイルは、上空でまぶしく光ったかと思うと一瞬で消える。マッハ8で飛び去り、4分半後に450キロ先の目標に命中したそうだ。広島市から金沢市への直線距離にほぼ等しい。空恐ろしく、おぞましい兵器というほかない▲一方、北朝鮮が10日未明に行った異例の夜間軍事パレードでも、新型らしき大陸間弾道ミサイルが登場した。こちらは朝鮮労働党創建75周年を記念した金正恩(キムジョンウン)党委員長への贈り物なのか▲ところが何を思ったか当の委員長、時折涙も交えた演説で「真心と努力が足りず」とわが身を責め、「人民が生活の苦しさから抜け出せず、本当に面目ない」とも。際限ない軍拡の浪費ぶりに、嫌気が差したとしても不思議ではないが…。

(2020年10月13日朝刊掲載)

年別アーカイブ