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社説・コラム

『記者縦横』 透ける国とのなれ合い

■岩国総局 有岡英俊

 「市民の文化向上のため学校建設のお手伝いがしたい」。9月上旬にあった岩国市の小中一貫校である東小中の開校式。来賓の中国四国防衛局長のあいさつに米軍岩国基地を抱える街と国の過度の親密さを感じ、違和感も覚えた。学校行事に来賓で招かれるのかと。

 ブックカフェを連想する図書室、大型商業施設のようなトイレ…。新校舎には9年間で質の高い教育を提供するという施設の充実ぶりが随所にうかかがえる。総事業費約76億7千万円のうち数億円分が基地関係の補助金や交付金だ。

 市民生活がおびやかされない限り国の安全保障政策に協力し、相応の「配慮」を求めるのが福田良彦市長の基本姿勢。空母艦載機移転が完了した基地は極東最大級となった。防衛局長の開校式出席は市の継続的な貢献に応える一幕だろう。

 10月以降、最新鋭ステルス戦闘機F35Bが基地に追加配備される計画をめぐっても市と国とのやりとりには、信頼関係を超えた予定調和が垣間見られた。

 市長が容認姿勢を示した3日後、国は移行期間のほか、準備に向けた代替部隊の飛来も伝えてきた。市は突然の説明に苦言を呈したが、国は米軍からの情報入手の遅れへの謝罪を繰り返した。市側が遅れた理由や市民生活への影響について再質問しても同じ「答弁」ばかり。国と市のなれ合いが透けて見える。

 基地の変化が市民生活にどう影響を及ぼすのか。市と国は緊張感のある関係を築き、もっと突っ込んだ議論をするべきだ。

(2020年10月16日朝刊掲載)

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