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社説・コラム

永田町発 就任1ヵ月 岸信夫防衛相に聞く 再編交付金 代替を検討

「敵基地攻撃」目的とせず 呉基地護衛艦「かが」空母化

 菅内閣で初入閣した岸信夫防衛相(山口2区)が就任1カ月の節目に中国新聞の取材に応じ、2021年度で期限を迎える米軍岩国基地(岩国市)の再編交付金について、制度の代替案の検討を明言した。呉市の海上自衛隊呉基地を母港とする護衛艦「かが」が予定する改修は、政府が保有を検討する「敵基地攻撃能力」との関連を否定した。(桑原正敏)

 米軍岩国基地への最新鋭ステルス戦闘機F35Bの追加配備計画には、周辺住民から騒音の増大や事故の増加への懸念が出ている。岸氏は9月に岩国市や山口県の理解を得た点を踏まえつつ「周辺住民が安心して暮らせることが重要。米軍にも安全面の一層の配慮を申し入れていく」とした。

 また、基地のある岩国市や周辺市町を対象とした再編交付金に関し、「地元の状況は交付期限が切れても変わらない」と地元自治体の延長要望に理解を示した。「制度上は21年度までだが、代わるもので何ができるか考えたい」とした。

 防衛省は21年度予算の概算要求で海自の護衛艦「かが」の改修費231億円を計上した。米国から購入するF35Bの運用に向け、艦首の形状変更や甲板の耐熱処理などを施す事実上の空母化となる。岸氏は「隊員の安全や領域の守りを確保するために必要不可欠」と説明し、相手領域内で弾道ミサイルを阻止する敵基地攻撃能力への転用を「目的としていない」との認識を示した。

 地上配備型迎撃システム「イージス・アショア」の配備計画断念について「候補地の萩市は計画の影響を独自に検証してもらっており、改めておわびしたい」と話す。萩市や山口県阿武町への地元説明は「どういう形がいいか先方と相談していく」と述べ、具体的な時期には言及しなかった。

 岸氏は就任1カ月を振り返り、「自衛隊が地域に信頼され、他国からも信頼される存在になることで安定した地域をつくっていける」と防衛政策のかじ取りの鍵に「信頼」を強調した。

(2020年10月18日朝刊掲載)

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