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児玉光雄さん死去 広島一中で被爆 証言活動 88歳

 広島一中(現国泰寺高、広島市中区)1年生だった12歳で被爆し、がんの手術を繰り返しながら、被爆体験と放射線による健康被害を国内外で伝えてきた児玉光雄さんが28日、腎臓がんのため広島市南区の病院で死去した。88歳だった。

 児玉さんは1945年8月6日、爆心地から約850メートルの一中の木造校舎で被爆。倒壊した校舎から脱出して一命を取り留めた。同じ校舎や近くの建物疎開作業の動員現場で一中の1年生288人が被爆死した。

 60歳を超えてから胃、皮膚などに次々とがんが見つかり、手術を20回以上繰り返した。2010年から広島平和文化センターの被爆体験証言者を務め、級友の死や自らの病歴を通じて、広島を訪れる修学旅行生たちに核兵器の非人道性を伝えてきた。

 非政府組織(NGO)のピースボートの船旅などに参加し、海外でも証言。市の被爆体験伝承者の講師も務めていた。原爆資料館(中区)は館内の情報端末に児玉さんの「傷ついた染色体」の画像や「病歴」を載せ、被爆者はがん発生の危険性が高く生涯にわたり健康被害に苦しむことを伝えている。

 昨年3月に同級生の1人が亡くなり、45年8月6日に登校して被爆した一中1年生で唯一の生存者となっていた。今年7月にあった一中慰霊祭には、直前に腰椎を骨折しながらも、級友のため「絶対に出んと」と車いすで参列。取材に「核兵器の正体を全世界の人に知らせにゃあいけん」と語っていた。(水川恭輔)

(2020年10月29日朝刊掲載)

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