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反戦反核の画家 四国五郎さん 知ってますか 作品・活動 英文サイトで 米教授 世界へ発信

 米国オーバリン大(オハイオ州)のアン・シェリフ教授が、画家・四国五郎さん(1924~2014年)の作品と平和運動を紹介する英文ウェブサイトを開設した。絵や詩を通して反戦反核を訴え続けた表現活動の歩みを世界に発信する。(桑島美帆)

 タイトルは「戦後日本の民衆運動・四国五郎の反戦芸術」。日本が米軍を中心とする占領統治下にあった49年から、90年代までの作品に着目。四国さんが表紙絵を担当した詩人峠三吉の「原爆詩集」(51年)と「絵本 おこりじぞう」(79年)、「ひろしまのスケッチ」(85年)の3冊に焦点を当てている。

 オレンジ色で人間のシルエットを描いた原爆詩集の表紙絵は「戦争の犠牲者を連想させるが、抽象的に描かれている」と紹介。朝鮮戦争(50~53年)前後の厳しい言論統制をかいくぐっての表現活動を伝える。

 絵と詩を組み合わせたポスターをゲリラ的に街角に張り出した「辻詩」も、詳しい解説とともに取り上げた。峠たちが結成した「われらの詩の会」に加わり制作した。幼子を抱き締めた女性が必死の形相で逃げる姿を描いたものなど、5点を掲載する。

 日本文学が専門のシェリフさんは、約10年前から原爆文学を研究する中で、従軍とシベリア抑留、弟の被爆死を経験した四国さんの作品への関心を深めた。広島に通い、地元の市民団体「広島文学資料保全の会」(中区)のメンバーたちと交流を深めながら資料を収集した。

 大統領選を目前に市民間の分断がますます深まる米国で、「民主主義が大きく揺らいでいる」とシェリフさんは感じているという。「米国の若者たちに、四国さんの作品に触れてもらいたい。表現を通して抵抗を続け、民主主義を懸命に模索した軌跡から得るものは多い」と話す。

 四国さんの長男・光さん(64)=大阪府吹田市=らが画像データなど約50点をシェリフさんに提供した。光さんは「父は、反核を訴える手段として絵の活用を望んでいた。多様な文化圏で平和教材になるだろう」と期待している。

 ウェブサイトは http://scalar.oberlincollegelibrary.org/shikoku/index

(2020年11月2日朝刊掲載)

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