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被爆外国人神父 映像に 平和祈念館で来年企画展 詩人ビナードさん 声で出演

 国立広島原爆死没者追悼平和祈念館(広島市中区)は来年3月、被爆した外国人神父をテーマにした企画展を始める。メイン展示となる映像作品の収録が6日、西区のスタジオで始まり、米国出身の詩人アーサー・ビナードさん(53)=中区=が音声を吹き込んだ。

 約30分のドキュメンタリーで、爆心地から約1・2キロの幟町教会司祭館(現中区)で被爆したドイツ出身のフーゴ・ラサール神父や、祇園町(現安佐南区)の長束修練院長だったスペイン人ペドロ・アルペ神父たち6人の半生を追う。自らも大けがを負いながら負傷者の救護に奔走した姿や、戦後、教会の再建へと立ち上がった足跡などをたどる。

 ビナードさんは、本作品の主人公となるドイツ人フーベルト・チースリク神父役。体験記に残された言葉をつなぎながら物語を進める。この日はチースリク神父が幟町教会司祭館で被爆した瞬間に見た光景や、家屋の下敷きになった女性を救助する場面などを吹き込んだ。

 企画展「わが命つきるとも―神父たちのヒロシマと復活への道」は2022年2月まで。神父たちの直筆の被爆体験記や遺品も展示するという。ビナードさんは「ドイツやスペインで育った神父たちが、広島で人を助けようと能動的に行動した。『日本は唯一の被爆国』と線引きするのではなく、被爆体験は多様だと感じてほしい」と力を込めた。(桑島美帆)

(2020年11月7日朝刊掲載)

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