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連載・特集

緑地帯 大上充子 広島俳句今昔 <1>

 10月8日、広島県内の6結社でつくる広島俳句協会(木村里風子会長=俳誌「楓」主宰)が、広島市政功労表彰を受けた。伝統を重んじ、季語を大切にしながら歴史を歩んできた。平和祈念俳句大会や短詩型文芸大会の行事などに関わってきたたまものと感謝し、大変うれしく思う。

 これを機に、戦後の混乱の中、いち早く広島の文芸復興に尽力した俳人たちの業績を、いま一度振り返ってみたい。

 広島に原爆が投下されて75年、広島の俳壇の歴史は戦争や原爆と深い関わりがある。

 終戦により新しい時代が到来し、自由の窓が万人の前に押し広げられた。苦しい生活の中で文学的な潤いが切実に求められていた。わずかなスペースに数十人の同人の作品を一度に掲載できる短詩型文芸は、戦前から続く厳しい印刷、紙事情の中で強みを発揮した。

 敗戦の翌年から広島で次々に俳誌が創刊された。1946年に故杉山赤冨士さんが廿日市市を拠点に俳句文化の復興を願って「廻廊」を創刊。翌年に「夕凪」が誕生。誰もが生きていくことに一心になっていた時代。そこに文芸の灯をともした。

 私が所属する「早苗」も46年に創刊した。戦後の混乱期にもかかわらず、大勢の人が集まったようだ。同人の被爆者たちは原爆をテーマにした作品を後世に残す。句作を通じて原爆犠牲者や被爆者の苦しみ、生き方、被害の実態を伝え続けてきた。(おおうえ・みつこ 広島俳句協会事務局長=広島市)

(2020年11月10日朝刊掲載)

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