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連載・特集

緑地帯 大上充子 広島俳句今昔 <3>

 広島俳句協会の事務局を2005年に引き継いだ。以来15年間、会報の発行などを続けている。恒例行事の中で力が入るのは、毎年8月の平和祈念俳句大会だ。

 平和をテーマにした句に限るこの大会は、8月6日前後の日曜日に広島市中央公民館(中区)で開かれる。平和を願う講演を各結社の当番制で実施。この間に選者の先生方に選をしていただく。

 会場は毎回、満席になる盛況ぶり。鎮魂の祈りを込めた一句一句に心を打たれる。広島の至る所で見かける夾竹桃(きょうちくとう)の花。廃虚の中、いち早く芽を出した花に勇気づけられた人は多い。夾竹桃の句は毎回投句されているように思う。

 「原爆を思い出すから嫌だ」と言っていたお年寄りが、胸に迫る句を詠まれて市長賞や俳句協会平和賞を受賞し、恥ずかしそうに前に出られる。すると会場中から大きな拍手が湧き起こる。そんな光景がうれしい。

 大会は1965年8月6日、被爆20年の年に「原爆鎮魂句会」として始まった。黙とうの後、互選に入り、秀句を選んでいた。当時は、寄せられた句を灯籠に記して元安川に流していたという。

 俳句を通じ、平和を願う場として歴史を紡いできた大会だが、56回目となるはずだった今夏は新型コロナウイルスの影響でやむを得ず中止した。歴史が途切れたことをとても残念に思う。被爆から75年となり、被爆体験の継承が叫ばれている。平和を願う大勢の俳句愛好者が、来年、元気に投句されることを願うばかりだ。(広島俳句協会事務局長=広島市)

(2020年11月12日朝刊掲載)

緑地帯 大上充子 広島俳句今昔 <1>

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