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連載・特集

緑地帯 原仲裕三 ヒロシマと現代アート③

 1980~90年代初頭は好景気を背景に企業のメセナ(芸術・文化支援)活動が盛んだった。広島市では中区大手町の広島パークビル2階にあった「イトーキニューオフィスライフステージ」、中区八丁堀にあったギャラリー「INAXスペース」が代表的存在だった。新しい動向の美術や変則的な表現を紹介する展示の数々から刺激を受けた。イトーキでは、ヒロシマを代表する現代美術作家である殿敷侃(とのしき・ただし)さん(1942~92年)と出会い、話をしたこともある。

 87年、中区千田町に漢方医・広瀬脩二さんのコレクションを公開する「ギャラリー千田」が開廊した。世界中から収集された超一級の現代美術の作品を見ることは最上の楽しみになっていった。ギャラリー千田は休止期間を経て、2011年に「ヒロセコレクション」として再開し、コレクションカタログも刊行されている。

 1992年には友人2人と「ドクメンタⅨ」を見に行った。かつての東西ドイツの国境付近のカッセル市で55年から5年ごとに開催される現代美術展。92年はEU発足の前年に当たり、美術界のターニングポイントになる重要な展覧会になるだろうと言われていた。

 ディレクターのヤン・フートらの選出で39カ国、186人のアーティストが出品していた。作品の大きさ、数量、奇抜さや豪華さに圧倒された。

 その後もイタリア・ベネチアやドイツ・ミュンスターの国際展を見て回った。自身の表現を追究していけば方法や手段は後からついてくると、膨大な作品を見て肌で感じた。もう現代美術の道しかないと思った。(美術家=広島市)

(2020年11月24日朝刊掲載)

緑地帯 原仲裕三 ヒロシマと現代アート①

緑地帯 原仲裕三 ヒロシマと現代アート②

緑地帯 原仲裕三 ヒロシマと現代アート④

緑地帯 原仲裕三 ヒロシマと現代アート⑤

緑地帯 原仲裕三 ヒロシマと現代アート⑥

緑地帯 原仲裕三 ヒロシマと現代アート⑦

緑地帯 原仲裕三 ヒロシマと現代アート⑧

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