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被爆証言派遣 要請相次ぐ 広島祈念館 40件見込みに52件 修学旅行中止 影響か

 広島市中区の国立広島原爆死没者追悼平和祈念館は今月、原爆資料館(中区)の被爆体験証言者を全国の学校などに派遣する事業を始めた。国が年度末までの4カ月間で40件程度を見込んで予算化したが、すでに52件の申し込みがあった。新型コロナウイルスの感染拡大が収まらない中、祈念館は証言者の被爆者の意向を慎重に確認し、派遣先には感染予防策の徹底を呼び掛けている。(水川恭輔)

 祈念館は2018年度、被爆の実態を伝えるため、市が養成した「被爆体験伝承者」と、被爆体験記や原爆詩を朗読するボランティアを全国に無料で派遣する事業を始めた。証言活動をしている被爆者の要望などを踏まえ、本年度から被爆者も対象に加えた。同館が旅費と謝礼を負担する。

 すでに申し込みがあった52件のうち34件が12月中の派遣を希望。内訳は大阪府などの関西地方が24件と最も多く、埼玉県などの関東が4件、徳島県などの四国が3件と続く。初日の1日は、大津市など4カ所に派遣した。祈念館は、体験者から直接話を聞きたいとの要望や、広島への修学旅行を中止した学校からの申し込みが、件数を底上げしたとみている。

 ただ、新型コロナの感染が広がっているため、原爆資料館の証言者38人に意向を聞き、感染に不安を抱く人は派遣対象から外した。12月は10人程度で対応する予定。派遣予定の被爆者が意向の再確認で辞退したケースもあり、一部で被爆体験伝承者の代替派遣などを検討している。

 祈念館は派遣先の学校などに会場の換気や密集回避なども依頼している。祈念館を所管する厚生労働省原爆被爆者援護対策室は「体験者の証言を通じて被爆の実態を知りたいとのニーズは大きい。感染状況を見ながら、安全な形で進めたい」としている。

(2020年12月2日朝刊掲載)

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