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修学旅行 行き先は平和公園 コロナ禍 広島市立の2中 苦心の代替案 地元を再考

 新型コロナウイルスの感染拡大を受け、広島市立の中学校の大半が修学旅行の行き先を関東、関西から九州に変更している。そんな中、ホテルに一泊しながら原爆資料館(中区)や平和記念公園(同)を訪れた学校もある。被爆地ヒロシマを見詰め直し、平和への思いを強くしてもらう試みだ。

 瀬野川東中(安芸区)の2年生約200人が11月中旬、平和記念公園を訪れた。ボランティアの被爆者や大学生の案内で、グループごとに「原爆の子の像」や原爆慰霊碑など9カ所を約2時間かけて回った。熱心にメモを取っていた中村隆二さん(14)は「こんなに慰霊碑が多いとは知らなかった」と驚いた様子。被爆者の体験証言にも耳を傾けた。前日は宮島(廿日市市)を観光し、南区のホテルに宿泊した。

 同校は当初、11月に2泊3日でユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ、大阪市)などを訪れる予定だった。新型コロナの収束が見えない中、県外での実施を断念。苦心の代替案が、宮島観光を組み合わせ、旅行気分を維持した上での平和学習だった。

 普段から学校ぐるみで平和学習に取り組んでいるが「市内でも中心部から離れた地域に住んでいると、原爆の傷痕を感じる機会はどうしても限られる」と児玉安司校長。10月に計画変更を生徒たちに伝えた際「世界の平和が脅かされている今こそ命の大切さを学ぼう」と呼び掛けた。

 菊本花和(かんな)さん(14)は「小学校で学んだことの繰り返しだと思って最初は正直がっかりした」。しかし、平和記念公園を歩き、被爆者の思いに触れて「多くの人の悲しみや核廃絶への願いに向き合えた」と話す。

 安佐北区の口田中も今月1日、廿日市市内に1泊しながら平和記念公園を訪れる修学旅行を実施した。芝山潤一郎校長は「生徒は積極的に平和への思いを述べ合ってくれた。皆で原爆について考える場になった」と手応えを感じたという。

 市教委の松浦泰博・指導第二課長は「普段からの平和学習プログラムに加えて、さらに理解を深める機会を持つことには意義がある」と話している。(新山京子)

(2020年12月15日朝刊掲載)

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